「(ほぼ)リアル・シミュレーションとして復活!」ゴジラ しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
(ほぼ)リアル・シミュレーションとして復活!
ゴジラ・シリーズ第16作。
DVDで10回目の鑑賞。
前作以来9年ぶりに公開された昭和最後のゴジラ映画。2作目以降をリセットし、1作目の続編として製作されました。
東宝のパニック映画路線を受け継ぎ、ゴジラが出現した場合の政府や自衛隊の行動がシミュレーションされていました。
本作を深化させると「シン・ゴジラ」になる。感慨深い。
小林桂樹などの名優が集結していて圧巻。特に金子信雄と加藤武は、「仁義なき戦い」シリーズの山守と打本の関係をオマージュしたような絡みがあってニヤリとしてしまいました。
カメオ出演も石坂浩二に武田鉄矢など豪華極まりない。名優たちの重厚な演技が虚構にリアリティーを加えていました。この面子が「ゴジラ」と口にするのが単純にすご過ぎます。
その中で初々しい魅力を放っていたのが沢口靖子。当時は東宝シンデレラのグランプリを獲得したばかり。演技は拙いですが、硬派な作風に爽やかな風を吹かせていて魅力的でした。
復活したゴジラは恐怖の象徴として描かれていました。静岡で原発を襲撃し、1作目を模倣したルートで東京を蹂躙。
新幹線を鷲掴みにし、地下道に躓いて日劇から改装したマリオンを破壊すると云う1作目のオマージュが最高です。
新宿副都心で自分の背丈よりも高いビルに囲まれ、それらを見上げる姿はかなり物悲しく見えましたが、人類の築き上げた文明をぶち壊す勢いで暴れ回る様はどこか痛快でした。
クライマックス、伊豆大島に誘導されたゴジラが噴火を誘発された三原山に呑み込まれるシーンは、切なさに満ちた劇伴も相まって、シリーズ屈指の名場面だと思いました。
作風のお陰か、ファンのみならず一般の観客層にも受けたようで、1985年度の邦画配給収入第2位となる大ヒットを記録し、まさに華々しい復活となりました。
[余談1]
スーパーXの登場が無かったらもっとリアルなシミュレーション映画になっていたんじゃないかなと考えると、東宝特撮の伝統の悪い部分が出てしまった気がしました。
その反省から「シン・ゴジラ」には実在の兵器しか登場させなかったそうです。しかし、VSシリーズに跨る超兵器の原点として、スーパーXの存在があることは否めません。
[余談2]
本作の海外版では、ソ連軍人が故意に発射させたように改変されていました。アメリカで編集したために、当時の情勢を考えると改変は必然ですが大人気無い気もしました。
ちなみに、1作目の海外版に登場したレイモンド・バー演じるスティーブ・マーティンが30年ぶりに再登場し、アメリカ軍の司令室でゴジラによる災害を見守っていました。
[以降の鑑賞記録]
2019/11/27:Amazon Prime Video
2021/08/15:Blu-ray
※修正(2023/11/08)