劇場公開日 1962年8月11日

「私のナカではゴジラシリーズのベスト3」キングコング対ゴジラ カンパク薬局さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0私のナカではゴジラシリーズのベスト3

2023年11月9日
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世間ではこの映画をしてゴジラを核兵器が生んだ禍々しい怪物から人間が怪獣や宇宙人で困ると何処からともなくふらりと現れる寅さんのような大衆的スターに向かわせたとして評判は良くないのだが、今見てみるとその「当時の現在」が面白い。

この映画の主役はもちろんゴジラとキングコングなのだがこの二人を日本に呼び込んだのは当時勃興してきたテレビの視聴率を上げたいスポンサーで、特にキングコングを呼び込んだスポンサーであるパシフィック製薬の宣伝部員たちの昭和っぷりなドタバタが本当に面白いのだ。宣伝部長の有島一郎は随所に小演劇仕込みの小ネタを繰り出しながら「キングコングのスポンサー」として様々な場所にしゃしゃり出てくる。

そんな有島に部下の高島忠夫や自衛隊までもが「そりゃあないよな」な感じで振り回される。
ストーリーもご都合主義で当時の「サラリーマン社長シリーズ」に重ね合う。
その中でも特にご都合感が満載なのは高島忠夫の妹に扮した浜美枝だろう。ともかく彼女は異常なほど災難に出くわすウルトラ不運な女性で乗った列車はゴジラに投げ飛ばされる、帰ってきた東京ではキングコングに気に入られ、さらわれたあげく国会議事堂へのデートに付きあわされるなどとてつもない不運ぶりである。そしてキングコングと言えば美女の悲鳴と言う事で彼女は実際に喉が枯れるほど何度も悲鳴をあげたのだが、その悲鳴がハリウッドの目(耳?)に留まり後日、日本が舞台となった「007は二度死ぬ」のボンドガールに抜擢されたのであるから実体の彼女にとっては不運どころか大幸運だったのだろう。

ともかくこの「キングコング対ゴジラ」でゴジラ映画の基本パタン「ゴジラはなかなか出てこず、満を持して登場する」「人間側の主人公は偉い人とかゴジラ退治者ではなくゴジラと深く関わった民間人」が確立する。

その後昭和ゴジラシリーズはモスラやキングギドラなどの大スターを生むとともに当時の米ソ宇宙開発競争に影響され宇宙人なども登場し蘇生や時間移動などストーリーが何でもあり化してしまい沖縄返還後のゴジラではシーサーまで怪獣にされてしまう。

カンパク薬局