「ゴジラ二作目記念すべき怪獣対決、円谷英二が特技監督というクレジットを確立した作品。」ゴジラの逆襲 菊千代さんの映画レビュー(感想・評価)
ゴジラ二作目記念すべき怪獣対決、円谷英二が特技監督というクレジットを確立した作品。
ゴジラファンからも評価が分かれている作品。初代ゴジラとは別物くらいの激しい怪獣格闘は必見!(初見で観る時は、是非ゴジラという“怪獣”の概念が無い中に公開された「ゴジラ(1954)」と、その数ヶ月後にこの作品が公開されたという事を想像しながら見ると面白い。初代ゴジラを想像していた観衆は、きっと動きの軽快さに唖然としたのでは無いだろうか)
独自採点(62):市街地ミニチュアセットスケール1/ 25(超全集)
制作田中友幸、監督小田基義、特技監督円谷英二、音楽佐藤勝
通称:逆ゴジ・登場怪獣:アンギラス・防衛:防衛隊/(クレジット無し)「海上防衛隊」・昭和30年4月24日封切り・白黒スタンダード/上映時間:1時間22分・上陸地(大阪湾此花区)・破壊地(大阪湾岸工業地帯・大阪城)・特撮爆破炎上破壊規模B(初ゴジよりは少なめ)
特徴:目線が対戦怪獣向けに正面、首のシワ覗き穴目立ち、尻尾が柔軟、背びれ3番小さい、足指4本。
特技監督というクレジットが使用され東宝怪獣映画における怪獣対決パターンを作った歴史的作品。ミニチュアセットも新設された東洋一の第8・9ステージに大々的に製作された。ただし、初代ゴジラからわずか5ヶ月後の公開だったことからも準備不足が否めない作りかも知れない(製作の田中プロデューサーも後年述懐)、途中ゴジラの被害報告する場面では前作の映像をそのまま流用、肝心のゴジラ出演シーンが・・・初代ゴジラに比べやはり物足りないというのが正直な印象。第一作目がこの出来だったらゴジラの歴史は続かなかっただろう。
出演者は志村喬・千秋実・土屋嘉男・小泉博はじめ黒澤組の名優が出演だが、全体的に暗いトーンでかつホワットした映像はクリアだと着ぐるみが陳腐に映る事やフランス映画の影響もありソフトフォーカスレンズを使用し狙って撮影したとも言われている。
対戦怪獣のアンギラスも元々は別の作品となる予定だったらしいが、前作の歴史的大ヒットによりゴジラの対決怪獣第一号として登場する事に。ただしゴジラスーツは格段の進化を遂げて格闘シーンでは驚異的な動きを見せる(スーツの進化もあるが、撮影助手のミスにより高速度撮影するものを微速度撮影=コマ落とししてしまった。結果として初代では考えられないような怪獣同士の格闘戦が繰り広げられる事となる。初代ゴジラに圧倒された人達はこの動きのギャップをどう感じたのだろうか?初ゴジ鑑賞者の感想は色々な書物にも記載があるがぜひ知りたいところだ)。
戦う舞台は大阪、前回が東京だった事もあり大阪経済界から「ぜひ大阪に」と言う中々政治的な大人の事情も垣間見える。
作品としての統一感に欠ける点はあるものの、特撮は地下鉄の天井が崩れ大量の水が流れ込むシーン(東宝の大プールは未完成だが、のちに「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐」のために大プールを設計した井上泰幸こだわりのシーン)や大阪城破壊シーン(大スタジオ完成)など見応えは十分、以降の東宝特撮映画の地盤を築いた作品とも言える。
特撮シーンには円谷英二特技監督のこだわりや実験的な取り組みが各所に見られ、特撮班がやりたかった事が詰め込まれているだけに、本編班とのギャップが大きいというのが全体の印象。
※ゴジラの上陸は小プール(ひざ下)。
観客動員はゴジラ作品の中でも3位(観客動員数834万人)と映画が娯楽の中心だった頃の動員数は今更ながら驚異的。色々と歴史的には意義深い作品ながら、短期間で作られたこともありゴジラの登場シーンが少ないなどで評価は厳しめ。また、1953年東京有楽座・大阪南街劇場で幕を開けたシネマスコープ採用館はあっという間に広がるが本作はまだスタンダードサイズである。
時代:人口:9千万人(封切料金¥130※実勢価格約半額)、キネマ旬報(定価¥140)、団地の平均家賃は47,900円、TBS開局、後楽園遊園地オープン、都内にスモッグ発生(毎日ムック)、初のアルミ1円発行、ソニー初のトランジスターラジオ発売、平均寿命(女性68歳・男性64歳)、ラッシュアワーの押し屋アルバイト初登場、銀座交差点は都電走り銀ブラをする人の風景、日本電信電話公社が料金前納式の公衆電話機を発売、 トロリーバス池袋駅 - 千駄ヶ谷四丁目間・千駄ヶ谷四丁目 - 渋谷駅間開業(68年廃線)、物価ガソリン¥37/1ℓ・ビール大瓶¥125円/自動車保有台数16万台、前年末からの神武景気で高度経済成長著しい時期、英国が水爆製造開始、東京国際空港(羽田空港)の先代のターミナルビルが開館、ワルシャワ条約機構結成=冷戦激化、 日本住宅公団(現在の都市再生機構)設立
好きなショット:44’大阪城門越しにアンギラスと睨み合う