「戦争体験者による戦死者への鎮魂歌としての怪獣映画ゴジラ」ゴジラ(1954) Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争体験者による戦死者への鎮魂歌としての怪獣映画ゴジラ
太平洋戦争終戦から9年経ちサンフランシスコ平和条約から3年後の、自衛隊が正式に創設された1954年の日本人を震撼させた歴史的事件が、アメリカ軍により行われたビキニ環礁での水爆実験で被爆した第五福竜丸事件でした。敗戦の荒廃に続いてGHQの占領下から独立国として自立しようとしていた時に、広島・長崎の原爆投下による非人道的攻撃の悪夢を再び呼び起こす出来事に日本人が激怒したことは、至極当然に想像できます。この1954年に制作された日本映画の特撮怪獣映画の金字塔である「ゴジラ」シリーズの原点が、その事件を批判する動機から反核と反戦を主題とした娯楽映画に転化したことは、特別な意味を持っていました。それは怒りのメッセージを秘めながら、子供から大人まで楽しめる映画の特徴を生かして、これまでにない恐怖体験を観衆に与えたに違いないからです。その創造性の豊かさは、特撮監督円谷英二と音楽伊福部昭の偉業に象徴されていると言って過言ではないと思います。
私が格闘する怪獣を無邪気に楽しんでいた子供時代のゴジラ映画とは一線を画す元祖「ゴジラ」。特に最終段階のオキシジェン・デストロイヤーと共にゴジラに対峙する芹沢博士の心中を思うと、とても切ない気持ちになりながら、これは幸いにも戦争を体験しないで済んだ世代の限界も感じます。戦争体験者による戦死者への鎮魂歌としてのゴジラ映画として、日本映画史に刻まれたこの名画の精神は、令和の「ゴジラ-1.0」の戦後世代に引き継がれています。どちらも映画を愛して、楽しんで、大切にしているのが伝わり、私には嬉しくて素直に感動してしまうのです。
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