「東宝特撮の歴史は「ゴジラ」に始まり「ゴジラ」に終わる。」ゴジラ(1954) ハーシー・カイルトラスさんの映画レビュー(感想・評価)
東宝特撮の歴史は「ゴジラ」に始まり「ゴジラ」に終わる。
今更、内容の話は言わずもがな。
当時、東宝が熱心に製作を進めていたという、日本とインドネシアの合作映画の話が白紙にならなければ、ゴジラは誕生しなかった。
第二次世界大戦終結から9年。国民の傷は深く残ったまま。
それでも終わることのない核兵器の脅威。
スタッフは未曾有の大作に奔走した。
本編の本多猪四郎監督は、ゴジラが劇中で破壊する実在のビルを一件一件訪ね、頭を下げて回った。
激怒されようが、門前払いを喰らおうが諦めなかった。
特撮の圓谷英二監督は、映画美術としての評価が低かった特撮をフルに発揮しようと、考え得るアイディアを全て投入した。
ゲテモノ、キワモノと呼ばれた特撮映画の汚名を返上したかった。
ゴムの塊で出来た着ぐるみは重さと暑さを極め、アクターを務めた中島春雄氏は何度も失神した。
当時デビュー1年目の大部屋俳優で、この作品が初主演となった宝田明氏、主演のプレッシャーよりも見えない巨大な演者を相手にどう演技をするかに頭を悩ませただろう。
東宝の上層部を説得するために、再三の会議を設けたであろう田中友幸プロデューサー。
「こんな在りもしない化け物が街を暴れる映画がヒットするわけがない。」
そして迎えた、1954年11月3日.....
今考えると、世相も人も、ありとあらゆる必然が重なり、生まれるべくして生まれた作品なんだと心から思います。
66年経った今でも、シリーズ全ての作品でオマージュされるのはこの第1作です。
絶望と悲劇を詰め込んだ空想は、全人類への宿題となりました。
この作品で描かれた地獄が現実に起きないことを祈るばかりです。
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