「クーデターも傑作も夢想の果てに」皇帝のいない八月 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
クーデターも傑作も夢想の果てに
あるパトカー炎上事件をきっかけに、元自衛隊将校らに不穏な動きが。
やがてその首謀者らが寝台列車に乗り込み、列島震撼のクーデター計画が開始された…!
元自衛隊員らがクーデターを起こす…。
衝撃的な内容の同小説を映画化した1978年の作品。
社会派の名匠・山本薩夫による重厚なタッチ。
水面下で蠢く陰謀~決起、列車内の駆け引き、日本政府との駆け引き。
社会派ドラマ、列車パニック、当時タブーだったというテロ/クーデター物…。
渡瀬恒彦、吉永小百合ら超豪華キャスト。特に、三國連太郎、丹波哲郎、佐分利信の名優揃い踏みには唸らされる。
邦画でもなかなか本格的なポリティカル・サスペンス大作。
スケール充分。
エンタメ性もあって一応見応えあるが…、ちと話に入り難い。
この手のジャンルなので小難しいのはまあいいとして、クーデター首謀者の元自衛隊将校の夫とその妻、妻のかつての恋人の男と女の関係は緊迫感の中でムード違いのセンチメンタル。
ドキュメンタリータッチのポリティカル一本にした方が良かったと思う。
動機はどうあれ、クーデターの結末は…。
泡と消えたその夢想のように、作品も傑作になり損ねた。
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