「若き日の原節子と壮絶シーン」河内山宗俊 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
若き日の原節子と壮絶シーン
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甘酒を売ることで弟との二人の貧しい生活を支える少女の役を原節子が可憐に演じる。しかし、その弟がだらしない。盗み、女郎の足抜けに加担などやりたい放題の揚句に、姉を身売りするところまで追い詰めることになってしまう。
遊び人の河内山宗俊らが、その少女の健気さに義教心を打たれて、やくざの手から逃れさせることになる。そこへ至るまでの宗俊とその妻の葛藤がドラマチックである。いい歳をした夫が若い女にほだされていると誤解し嫉妬の塊となっていく妻を、宗俊ははじめは冷たく突き放す。自分の嫉妬心すらも顧みられず、ますます怒り心頭の妻に対して、いよいよ自宅にやくざたちが押しかけてきたときに、彼は「お前は河内山宗俊の妻」なんだという言葉を残して去る。このたった一言で、妻は夫の義侠心と自分への信頼を確認し、やくざの追っ手に対して毅然とした態度で臨むのだ。
このような決定的なセリフが映画の随所に現れるなかなかの脚本だ。
しかし、画のほうも素晴らしい。水路にバリケードを築いて追っ手を阻む河内山宗俊が、その障害物を必死で支える背に刃を受けてなお立ち続けるラストのシーンは、いったいこの後どれほど多くの作品に受け継がれた構図だろう。やはり、カメラのほうを向いた被写体がその背中を襲われて苦悶の表情を見せるというシーンは壮絶である。
もう一度ゆっくりとセリフを味わい、アクションシーンの構図を確かめながら鑑賞したい一本である。
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