恋人たちは濡れた

劇場公開日:

解説

五年振りに故郷の土を踏んだ男、しかしそこには遠く離れた過去の想い出しかなかった。その青年の暗い青春を描く。脚本は鴨田好史、監督は脚本も執筆している「一条さゆり 濡れた欲情」の神代辰巳、撮影は「哀愁のサーキット」の姫田真佐久がそれぞれ担当。

1973年製作/76分/日本
配給:日活
劇場公開日:1973年3月24日

ストーリー

克は五年振りに故郷の土を踏んだ。しかし彼を迎えたのは冬のドス黒く荒れた暗い海だった。克の仕事は寂れた漁港の映画館・昭和館のフィルム運びである。彼にとって住み心地の良い場所であり、女王人・よしえにも気に入られていた。やがてよしえは、克の過去に興味を持ち出し、その興味が二人を深い関係へと押し進めていった。ある日克は、学校時代の同級生・三浦と岡田に会った。過去を忘れたい克は、あくまでも自分は克ではない、と言い張り二人に叩きのめされてしまった。そして数日後、今度は同級生の光夫とも出会った。光夫と彼のガール・フレンドの洋子とのカーセックスを覗き見し、見つかってしまったのだ。それ以後、光夫と洋子は克の人生を捨ててしまったような態度に興味を覚えた。翌日、光夫はいやがる克に誰とでも寝る幸子を紹介した。やむなく克は幸子を抱こうとするが、そんな煮え切らない克を幸子は拒否した。光夫たちの克の過去に対する興味はますます強くなり、今度は克の母親を連れて来て、対面させた。克は母親ではない、と突き放すが、本心を洋子に見抜かれてしまった。洋子は哀れむような眼を克に向けたが、同時にそれは克への熱い眼差しでもあった。その眼が克には安らぎを感じさせ、自分の過去を洋子に告白するのだった。それは東京で起こしてきた殺人のことだった。信じかねる洋子。しかし二人の間には愛が芽生えていた……。克の前に一台の車が止まり、中から出て来た男が突然克の胸にドスを突き刺した。崩れていく克。その眼が一瞬洋子の顔をとらえた時、無念さと、安堵の色があった。

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映画レビュー

5.0大傑作

2023年10月30日
スマートフォンから投稿

泣ける

笑える

知的

素晴らしいすぎて、言葉が出ない。
映画とは何か、それを根底からひっくり返してしまうような映画だ。

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てんこう

4.0嗚呼フナショクパン

2019年11月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

萌える

恋人たちは濡れた(神代辰巳 1973)
主人公が自転車でフィルムを運ぶ冒頭のシーンで「フナショクパン」の看板を確認。千葉が舞台のようだ。
絵沢萠子さんが男を追いかけて歩き回る商店街はどのあたりだろうか?
馬飛び、みかん投げ、首吊り失敗など素晴らしいシーンがありすぎるので、もう一度じっくり見てみたい。

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yoursuitcase

3.0当時の団塊の世代の虚無感を本作は見事に表現している 当時の若者達に支持された理由はよく分かる

2019年11月10日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

これもまた70年安保闘争に敗北した団塊世代の鎮魂の映画のひとつだろう
日活ロマンポルノというフォーマットを使ってはいるが、描こうしているテーマはそれだ
しかし、彼等自身の姿として描いており、下の世代の物語にすり替えるような偽装をしてないだけ好感が持てる

冒頭は葬式のお経から始まる
誰が死んだのか?
勿論70年安保闘争だ
だから主人公は万博音戸を繰り返し歌う

♪1970年の~と

主人公は各地をさ迷って、外房大原に流れて来ている
どこに居たのかと聞かれて、彼は成田をを外したその周囲の町の名前を次々にあげる
彼が殺したというのは、成田闘争で殺された機動隊三名に関与したことを意味するのかも知れない

23歳位だろうか?
ということは大学を卒業したものの、まともな就職先がなく、各地のパチンコ屋を転々とし、今は大原の小便臭いポルノ映画館の下働きのバイトだ

彼は5年前に確かに故郷の町をでたのだろう
しかしこの大原であるとは限らない
彼はどこの町に行っても、中川克では無いのか?と聞かれたに違いない

中川克という名前に意味はない

それは映画館の奥さんが聞いたように、あなた過激派?という問いかけだ

それは一般人だけでなく、かって属していた学生運動の組織から問いかけられるのだ
70年安保闘争が敗退して彼は学生運動から距離を置いて離脱した
都はるみの好きになった人を繰り返し歌うのはそれだ

♪さようなら、さようなら、好きにな~った人~

しかしまともな就職はできず、各地を転々とするしかない
そして各地で主人公をみかけると、彼は活動家では無かったのか?と問われ、活動に引き戻されようとするのだ

しかし彼は最早政治活動にはもう嫌気をさしているのだ
海岸べりの草むらで野外セックスに励む男女を観察するように傍観するのみだ
その態度が活動する側からみれば許せない背信行為なのだ
だから暴行を受けるのだ

つまり活動から離脱しようとする仲間を粛清する内ゲバを扱っているのだ
そう、本作公開当時は連合赤軍の凄惨な内ゲバ事件の時代だったのだ

彼は活動から距離を置こうとしているのだが、やがて彼等に引き込まれていく
長く続く飛び馬のシーンは今後の活動方針を示したものといえる
急進的ではなく、地道に漸進的に活動を進めて行こうということだ

しかし結局のところ彼は内ゲバで殺されていくのだ

ポルノシーンは長いが、それはこのような隠されたテーマで映画を撮るための方便に過ぎない

現代の露骨で過激なAVからすれば大したものではない
とはいえ黒い四角いベタや白いインクで局部を隠すシーンは多い
しかし現代の女性なら問題なく観ることができるはずだ

当時の団塊の世代の虚無感を本作は見事に表現している
当時の若者達に支持された理由はよく分かる

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あき240

4.0アウトドアな濡れ場

2019年2月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

興奮

日活ロマンポルノ、いやこれは神代辰巳が描くアメリカン・ニューシネマの如き閉塞感が漂う無気力な若者たちの何者でもない何もない物語。

生意気な態度の割にはすぐヤラれてしまう喧嘩の弱い主人公のセリフ回しが下手なんだけれど味があって淡々と話す素振りの演技?が良い。

洋子役のとっぽい存在感にヘロヘロした喋り方など魅力が溢れた女優さんで素晴らしい。

あんな勢い良く全速力で熟女に追い掛けられたら怖くてたまらないし劇中、一番迫力のある場面だった!?

ショーケンが惚れ込む理由も納得な70年代、日本映画の中でも傑作なのは間違いない。

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万年 東一