劇場公開日 1986年12月13日

「とても知的だけど堅苦しくない青春コメディー」恋する女たち(1986) 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0とても知的だけど堅苦しくない青春コメディー

2021年9月8日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

楽しい

知的

原作既読
10代の頃に初めて読みその後も何度か読んだ少女向けの小説の名作
当時流行した集英社コバルト文庫
『なんて素敵にジャパネスク』とか『海がきこえる』も読んだな
体調不良で作家活動が出来なくなり2008年に51歳の若さで亡くなった氷室冴子の代表作の映画化
原作の小説の表紙は映画化になった影響でイラストから劇中斉藤由貴が壁に向かって胡座をかいて腕組みをするシーンになっている
その味わいをほぼ忠実に再現した大森一樹監督の代表作
個人的には邦画ベストテンに永遠にランクインさせたい傑作
興行成績としても優等生でこの作品は監督と主演女優が賞を獲得した
原作者が大学で真面目に文學を研究し青春を捧げていたんだなと強く感じさせる作品

原作は北海道だが映画ではなぜか金沢
事情は知らない

ヒロインたちが通う高校には制服がなく私服で通っている
初めて鑑賞した時は田舎者で世間知らずなので強い違和感を感じたが制服がない高校はわりとあり埼玉だと所沢高校が代表的
金沢にも私服の高校はあるそうだ
女子高生が制服姿じゃないとエロティシズムを全く感じないことに気づく
映画の設定では金沢一高という石川県でもトップクラスの進学校らしさを感じる頭がいい子が通う高校の印象
だから登場人物のやりとりもいちいち知的で文学的表現
理屈っぽいが嫌味じゃない
別にいいけど普通に酒を飲んでいる

多佳子(斉藤由貴)と汀子(相良晴子)と緑子(高井麻巳子)3人の恋する女子高生の成長を描く形
高井麻巳子はたしかに当時おニャン子クラブ所属のアイドルだがこの作品はアイドル映画でない
相良晴子はもちろん女優だしアイドル的な活動もしていたが斉藤由貴だって本来は当時から女優である
だって所属事務所は東宝芸能だし

若い頃は何度も観た映画だがここ何十年か観なくなった
歳をとってしまったからだろうか
テレビ放送されたこの作品を録画したVHSも今はない
昔はどこのTSUTAYAでも置いていたが少なくとも宮城や岩手では最近あまり見かけなくなった
そこでU-NEXTで初めて映画鑑賞

いきなり緑子の葬式
別に死んだわけじゃない
なにか精神的ショックがあると生前葬を開催し友人の多佳子と汀子を招待する恒例行事

多佳子の実家は石川白山の温泉旅館で大学に通う姉と二人暮らし
姉を演じるのは原田知世の姉でこれもまた懐かしい
姉に本をぶつけられるときの多佳子の表情が静止画像になるがそれが印象的

映画館の前での『ナインハーフ』と『ナイン』の件すき

ギバちゃんの一言に大笑いしながら「なんといういわれ方。女の悲劇だ」という縦書きの字幕も好き

決闘を止めるのに本当にワーワーキャーキャー言いながら走る多佳子が良い

崖っぷちで多佳子汀子緑子3人がお茶会するシーンも良い

この作品をきっかけに斉藤由貴の大ファンになった
斉藤由貴がとても可愛い
それに比べたら浜辺美波も永野芽郁もたいしたことがない
全くエロくないのに斉藤由貴ファンとしては何度も何度も「アラいいですねえ」の波が押し寄せてくる
寄せては返す日本海の荒波にも似た斉藤由貴の魅力
そして最後は多佳子のもう1人の友人である美術部の絹子が描いた絵を観るラストのギバちゃんと同様な表情になりながら押し流される

エンディングテーマは斉藤由貴の『May』
エンドロールがずっと裸婦画なのも珍しい

何度か不倫問題をやらかしている彼女だがそれでもすぐに何度も現場復帰できるのは業界のおじさんたちが若い頃から彼女に恋しているからだろう
だからいくらネット民が叩いても無駄なのである
ざまあみろ

野川新栄