劇場公開日 1986年1月15日

「全員本気の熱気の凄さ」玄海つれづれ節 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0全員本気の熱気の凄さ

2019年8月20日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

  原作とする吉田兼好の随筆「徒然草・第三八段」は金や富、権力や地位、才能や名声に重きをおくは愚行、善悪ですら虚無とする達観した人生哲学である。出目監督の人望だろうか実に豪華、異色、芸達者な出演陣を集め、妥協を許さない骨太の東映・映画人たちが現代(といっても昭和だが)に具現化した力作である。 昭和の時代、訳ありのヒロインの故郷、北九州を舞台にショートカットの小百合ちゃんが男気あふれる一肌脱いだ快演を見せる。脇を固める助演陣の凄いこと、八代亜紀さんのキャスティング、単にファン層の取り込み狙いでなく、ともすれば優等生、大人の色気が懸念される小百合ちゃんの目眩ましの意図であえて女優を排したのだろうが芝居ができるのには驚いた、濃厚ラブシーンを受けただけでも特筆もの、おまけに劇中歌までサービスとくれば文句のつけようがない。風間さんは男臭さが程よくて出過ぎず引き過ぎず、多くの助演賞に輝く芸達者。黒澤映画の重鎮、三船さんは無法松を演じただけに小倉には縁が深い、単なる箔づけではないのであるが、さすがに出てくるだけでオーラが違う。チョイ役ながら草笛さんも持ち前の程よい色気と品格でやりての女理事長を嫌味にせず、いい味だしています。希林さんは小百合さんと3歳しか違わないのに老け役の天才、面目躍如。単に筋を追うのではなく多彩なエピソードを重ねて広げて伏線回収、一件落着では終わらない幕引き際の余韻、場数を踏んだプロの仕事とはこういうものだったのか・・・。世代ギャップはあるでしょうが、軟な今風映画に飽きたら温故知新に如何でしょう。

odeonza