劇場公開日 1971年8月14日

「仲代達矢さんの訃報を機に、改めて振り返る1971年の映画「激動の昭和史 沖縄決戦」。」激動の昭和史 沖縄決戦 山川夏子さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 仲代達矢さんの訃報を機に、改めて振り返る1971年の映画「激動の昭和史 沖縄決戦」。

2025年11月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

怖い

牛島満中将を小林桂樹さん、長勇参謀長を丹波哲郎さん、そして八原博通高級参謀を仲代達矢さんが演じ、これら主要な出演者が全員鬼籍に入られた今、作品の重みがより一層胸に迫ります。

沖縄戦を知りたいと思い立ち、最初に観たのがこの一本でした。
この映画は、単なる戦闘描写ではなく、インテリ層の将校たちの最期の日々を描き、欧米文化に親しみ、人生を楽しむはずの彼らが、軍国主義の渦中で「神国日本」「鬼畜米英」のスローガンに縛られていく姿が意外で衝撃的でした。

牛島中将と長参謀長のやり取りに、沖縄戦が決して遠い昔の話ではない実感が湧き、戦争の「分断」がもたらす恐怖を強く感じました。当時の日本には、洋風の言葉さえ禁止されるほどの狂気が渦巻いていた日本

特に印象深いのは、仲代さんが体現した八原高級参謀でした。
第32軍の参謀で唯一の生き残りとして、戦後『沖縄決戦』という赤い本を出版し、真実を後世に伝えた人物です。沖縄の我が家にもその本があり、戦後、生活が落ち着いたウチナーンチュ(沖縄の人々)がこれを読み、自分たちの体験した沖縄戦の、実際の戦況を初めて正確に知ったんだそうです。

この作品を観て、戦争を生き延び、復興を担った父と一緒に語り合いました。
父は無口で仏頂面の近寄りがたい人でしたが、心に大きな悲しみを抱え、「生き恥をさらした生き残り」として悔しさを胸に、日本復興の使命を背負って生きてきた人でした。八原参謀は、そんな「生き残る者の象徴」で、自暴自棄にならず、覚悟を持って前を向く姿に、父世代の矜持を見ました。仲代達矢さんは、そんな希望の光を演じきった「希望の人」だったと思います。この映画は、単なる歴史劇ではなく、失われた命と未来への責務を問いかける永遠の教訓だと思います。

山川夏子
PR U-NEXTで本編を観る