警察日記のレビュー・感想・評価
全2件を表示
昭和30年 貧しいが人情深い
昭和30年日活映画。経営的に地味な映画が多い頃だが、逆に監督たちがここで試した作品など内容的には充実した作品があるという。
東北福島県の農村の町の警察官の日々の様子から戦後の貧困社会の中で生きる人々と人情を描いている。
警察官には森繁久彌、殿山泰司、三國連太郎、三島雅夫、新人の宍戸錠、女性は黒澤監督の「生きる」に出た小田切みきや、杉村春子、沢村貞子など有名どころが出ている。
貧困のゆえの身売りと詐欺、盗み、望まれない結婚、無銭飲食、捨て子、夫の失踪などなど。
昭和30年の福島の農村地帯を舞台に貧困がゆえの生活の辛さが、それぞれの家族を襲うが、警察官もほのぼのと人情味がある。捨子を預かる旅館の女将は我が子のように育てようとするが、そこに母親が現れ子どもを見たいと警察に申し出る。実際には育てられる経済力がないため、心中をするつもりだと。警察官の森繁久彌は、それなら会わない方がいいが、自分が旅館に出向いて子どもを玄関前に出させて、その前をジープに載せた母親が車の中から子どもを見るという仕掛けをする。しかも往復。母親は窓から元気な子どもたちを涙ながらに見ながらも別れとなることに悲嘆にくれる。
無銭飲食の母と子どもの話では、警察官が子どもに「何を食ったか」「カレーライス」「他には?」「ラムネ」「お母さんは?」。別の警官「水だけだそうだ」。悲しくもあるが、ギリギリで生きている様子がにじみ出ている。
最後のシーンでは、鉄道のホームに、子どもと別れた母親や恋人に裏切られたが新たな門出となる男性、結婚する女性。それぞれを乗せて、汽車は出発する。
20140118@広島市映像文化ライブラリー
戦後間も無い地方都市の悲喜こもごも
「警察日記」シリーズ第1作。
Amazonプライム・ビデオで鑑賞。
警察モノなのに事件らしい事件は起きませんでしたが、人情味溢れる警察官たちの視点を通して、戦後間も無い地方都市に生きる人々の姿を描いた社会派作品でした。
捨て子の姉弟と人身売買と云うふたつのエピソードを中心に据えつつ、悲喜こもごもな人間模様が綴られていきました。
各々の挿話が直接絡み合うことはありませんでしたが、どれもが当時の世相を色濃く反映しており、今尚地続きに存在している貧困などの問題を浮き彫りにしているなと思いました。
森繁久彌、三國連太郎、杉村春子と云った名優たちの演技が素晴らしい。骨太な演技が物語に説得力を与えていました。
人情に訴えて来る演出手法によって泣かせどころが満載な本作ですが、それも名優たちの名演あればこそのもの…。
最後にこれだけは言いたい…宍戸錠が若い!
全2件を表示