軍旗はためく下にのレビュー・感想・評価
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日本人が反戦にならない秘密
反戦映画ではない。零戦や艦隊も出てこない。敵として戦った外人もほぼ出てこない。大日本帝国の軍隊の戦地における日本人による日本人への暴力が描かれ、生き残った者もまたはその遺族もエフェクトを受け続けている様が描かれる。今から50年ほど前の1972年に作られた映画である。そこには日本人が反戦にならない秘密の一端が描かれている。
ニューギニアの闇の奥
深作欣二監督の代表作で、脚本はなんと新藤兼人と異色の組み合わせ。敵前逃亡で銃殺になった亡夫の名誉を回復しようと、未亡人が関係者を訪ねていくお話しで、50年以上前の作品なのに、いまだ切れ味が鋭い作品です。関係者の証言はあいまいでありながら微妙に食い違うのは、『羅生門』スタイルだけど、人間のドロっとした生々しさが強調されているのは新藤兼人の作風かも。また、多彩な個性の強い役者さんの使い分けのうまさは、深作欣二のカラーかな。あまり戦闘シーンはなくスチール写真や記録映像を多用しているのに、画面から目が離せない迫真の作品で、反戦映画と言うより、軍隊ひいては戦後国家と言うものの非合理性や矛盾を描く社会派作品のイメージでした。役者では、左幸子が大熱演で実在感あふれる名演でした。また、復員者の一人、三谷昇の怪演振りも印象に残ります。丹波哲郎は、出番は少ないけど独特のふてぶてしさが感じられました。
戦争の悲惨さを描いた映画というのは多数ありがと、この映画ほど落ち着...
戦争の悲惨さを描いた映画というのは多数ありがと、この映画ほど落ち着いて悲惨さを描いているものもないのではないかと思う。いくつかの人々の供述を織り交ぜた伝聞の形式で語られる話は黒澤明の羅生門を彷仏とさせるが、それ以上にキャラクターの描かれ方が真実らしいことが映画としての受け取るときの素晴らしさをもり立てているような気がする。あえてここから得られる結論を述べるとしても、あらゆる場所で語られているように、戦争は国家とその中心にいる人物が勝手に始めたことで、そのしわ寄せを受けるのはやはり大多数の弱い人々であるのだなぁと。
最近Twitterの中で戦争体験は悲惨な話しか受け取らないように検閲を受けているみたいな話を聞いたけれど、もちろん戦争の体験の中にはその中で性的や経済的に良い思いをした人も存在していて、だとしてもその中で結局敗戦の折にとばっちりを受けた大多数の人がいて、差し引きで言うと恐ろしくマイナスなのだろうと思う。それを踏まえた上で戦後の人々が戦争は悲惨であると述べていることを、枝葉末節の個々人の語りを拾ってきてそれを持って反応するのもいかがなものかと思ったりをする。
日本人として観ておきたい。
自分の旦那がどうやって死んだのか。
戦死した夫の死の真相を知るべく、一人の女性が当時のことを知る生き残りの男たちを訪ねる。
男達は、終戦間近の頃どうやって生き延びていたかを語る。その内容は生々しく、観ていて怖くなった。
怖いから観たくない、けれど、観ないといけないことだと思った。これが現実にあったことなのだから。
武器がなく竹槍で戦っていたことや、食料がなく餓死していたこと、何のために戦っているのか分からないような状況下でただただ生き延びるために耐える。
辛いなんてもんじゃない、残酷な日々。
ゴミダメで暮らす人は、夫はいいひとだったという。
ふたりめは目が見えなく覚えていないと言う。ただ、人の焼かれる臭いが空腹でよだれがでるのを覚えている、と。
3人目は芸人。
洞窟から肉を持ってくる人。
野豚といい、本当は人の尻の肉だったという。
4人目は先生
飛行機の音が私たちには何のこともないただのうるさい音に聞こえるけど、戦争を経験した人たちにとっては恐ろしいものなのだろう。
最後はおじいさん。
遠巻きに摂るカットが良い。
最近のドラマだと被写体の近くでカメラを構えて撮るけど、こうやって遠くから撮るほうが自然で良い。
花だったり、子供だったり、平和なものを手前に引っ掛けながら戦争の話をする。
そういう話を聞いていて、戦うシーンではないのだけど
すごく残酷に感じたし、戦うために向かった兵士たちが飢餓と戦っていたこと。そういう誰も語りたくない、汚い、みっともない真実をこの映画から学んだ。そうやって死んでいた人たちがいたことを知るべきだと思った。
最後に白ごはんを食べるシーンは涙が出た。
そして日本はどっちですか?とその方向を見て死ぬ。
はじめの天皇陛下の献花にもすごく意味を感じた。
その献花されない人の中に、こうやって日本に頭を向け死んでいった人がいると思うと、やるせない。
とても観るのがしんどいけど、これが戦争なのだと思う。だから、日本人として観ておきたい作品だと思った。
戦時版「藪の中」
制作時期からして多分に反戦、反体制的意図が込められているのだろうが、そんな背景はさておき戦争未亡人が夫の死の真相究明のため様々な証言を得て少しづつ真実に近づいていくという設定が非常に新鮮であった。最後に辿り着いた真実らしき話もあくまで1人の告白によるもので絶対とは言い切れない。まさに戦時版「藪の中」。末期のフィリピン、ニューギニア辺りではこんな話がゴロゴロしていたのかもしれない。戦争は、というより飢餓は人間を人間で無くすということか。
「天皇陛下万歳」ではなく、抗議するような叫び方でした……。 生き残...
「天皇陛下万歳」ではなく、抗議するような叫び方でした……。
生き残りの復員兵の言葉が妙に余韻が残った。彼らに、菊を手向けることはできないのかな。
ゆきゆきて神軍と並んで紹介されることは多いが、また違う強烈な面白さがありました。
ジミヘン風君が代が妙に映画に合っている。
「我が国の軍隊は 世々 天皇の統率し給う 所にぞある」(軍人勅語)
戦争未亡人となった富樫サキエ(左幸子)は毎年8月15日に厚生省に赴き、夫勝男(丹波哲郎)が靖国に祀られないのはなぜか問い質す。決して遺族年金が欲しいからではなく、亡き夫の名誉のためだ。誰も証人がいないのに敵前逃亡、軍法会議で死刑という不名誉などあるはずがないと切々と訴え続けてきてるのだ。そこで新しい課長が事実を知るかもしれない、同じ部隊の4人の兵士を紹介する。サキエは一人ひとりを訪ね歩くのだが・・・
寺島:東京であっても東京ではない夢の島で暮らしている。富樫軍曹は勇敢な人で、命も助けてくれた。いいことしか言わない。最後は敵に突撃していった。
秋葉:戦争漫才をやっているコントラッキーセブンの関武志。軍曹はいも泥棒したため殺された。
越智:盲目のマッサージ師。人肉についてのエピソードを語る。あまり覚えていない。
大橋:高校古典教師。小隊長殺しのため5人が銃殺された。その時の軍曹ではないか?
答えは藪の中か?戦後27年も経っていたため、誰が誰かもわからないし、戦死したと言っても餓死者が多いニューギニア戦線のこと。大橋の証言により、敵前逃亡ではなく、小隊長殺しの罪で殺された可能性が高くなってきた。しかも終戦後のことである。
聞くだけでもおぞましい、敵前逃亡、友軍相殺、人肉嗜食、上官殺害・・・マラリヤや飢えと戦い続けた日本兵たち。やがて狂気と変貌し、戦ってる意味さえ無くした兵士。そんな空虚な戦争を国は始めてしまったのだ。人肉については頑なに口を閉ざす人が多かったらしいが、飢えに苦しむと人間は何としても生きようとするものだ。これが戦争なんだと胸が痛む。
終盤になり、千田少佐に話を聞いて怒り心頭するものの、また寺島から話を聞く羽目になったサキエ。誰もが語りたくない真実と、「天皇陛下・・・」という言葉の続きを知りたくなった彼女はさらにショッキングな結末へと向かうが、もう一緒に祀られなくて正解!と、戦争を憎むのだった。実際の悲惨な写真、モノクロ映像から血が噴き出るカラーへと変わる瞬間も残虐性を物語っているし、サキエの心の表れか、終盤に流れるジミヘン風ファズギターの音色がたまらないほど空しく響く・・・
大日本帝国の負の一面
戦犯として処刑された夫(丹波哲郎)の死に納得できない妻(左幸子)は、生還者を訪ね、何があったかを聞くことに。
飢餓と狂った上官がキーワードだったが、発生したのは、8月15日以後だった。
310万人の死者には、それぞれドラマがあったと思う。
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