劇場公開日 1968年2月17日

「崩落を伝える恐怖の音」黒部の太陽 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5崩落を伝える恐怖の音

2014年8月27日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

難しい

総合65点 ( ストーリー:65点|キャスト:70点|演出:65点|ビジュアル:75点|音楽:60点 )

 掘りたてで不安定なトンネルを崩れないように支える支柱や板が、不気味な音を立てて曲がって割れ目から石が落ちてくる。家族にも会えない人里離れた狭くて暗いトンネルの中で、いつ崩落を始めそれに巻き込まれてしまうのかという恐怖感に襲われる。断層に湧水にと難工事が続き、上からは仕事の怠慢を疑われ、下からは厳しい仕事に不満が燻り逃げ出すものが続出する。世紀の大工事の現場には土木工事に男を賭ける心意気が見えた。「狂った果実」に出ていた若い頃は台詞棒読みで大根役者だった石原裕次郎も、年月を経てここではずっとまともな演技になっていた。
 しかし建設計画からいきなりトンネル内部、そして貫通からダムまで場面場面が飛んでしまっていてどうも物語の繋がりが悪いし、その間に感動を作ろうとするわざとらしい人間劇が挟まれているのは余計に感じる。それにトンネル内部の危険性を表す描写はあっても、トンネル工事を進めて行く技術的な側面や掘削の描写が少なくて、工事自体の素晴らしさが伝わってこないし現場の臨場感を削いでいる。大勢が死んだのは知っているが、危険ばかりが強調されているのは不満。かなり金がかかっていそうだし良い部分もありつつも、あちらこちらに引っかかる部分もあった。

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Cape God