劇場公開日 1968年2月17日

「高度成長」黒部の太陽 Kjさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5高度成長

2022年1月9日
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「この映画は敗戦の焼あとから国土を復興し文明をきずいてゆく日本人たちの勇気の記録である」。冒頭の一文が言い当ててる。戦後世代ではなく戦中を知る残された世代が、前代を否定して変化や革新に邁進する。前代を否定するのが許された時代。圧倒的な自己肯定感。それでも戦争の匂いがする。戦場を黒部の地中に変えたようでもある。
安全の徹底といっても、現代からはほど遠いが、そこは割引くべきところか。殉職という言葉は、今あまり使わなくなった。崩落の映像はそれ自体が撮影事故のように見えるど迫力。水は冷たいはずだが、感じられなかったが。
いきなり工事内容不定で指し値を強要してきて、現場では同舟。中盤は金には糸目をつけぬと、これも現代からはレッドカードをあげたくなるが、まぁ、それだけ電力会社、敷いては電力料金に転嫁された需要者含めて、社会全体がスクラムを組んでこのプロジェクトに取り組んだ証。誰かにリスクを背負わしたり、連帯して責任を負わなかったり、揚げ足を取ったりはしない。それをわざわざスターが立ち上がって、社会として認知する訳であるから、この映画も含めて時代をよく示す。

Kj