黒蜥蜴(1962)のレビュー・感想・評価
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爬虫類の称号をもらいたい子分たち。青い亀、黄色い鰐…ここで両生類かな?と迷ったら偽物をつかまされるぞ!
岩瀬という宝石商を営む大財閥。娘の早苗を誘拐して、岩瀬の持つ宝石「エジプトの星」を付け狙う女盗賊“黒蜥蜴”。彼女は大胆にも名探偵と呼ばれる明智小五郎と直接対決を挑む作品。江戸川乱歩は戦前スランプに陥っていたが、この作品から大衆受けする変格モノをいくつか世に送り出すことになった。
テレビドラマ版のものしか見たことがなかったけど、これは三島由紀夫戯曲化版で、脚色を新藤兼人が書いたものという珍しい映画。特にブルジョア階級と貧乏人の比較がメッセージに含まれていて、ちょっとコメディタッチである上に、ミュージカル要素も加えてある。
大木実演ずる明智キャラは似合ってるかどうかというと、さほどでもない。しかし、京マチ子演ずる黒蜥蜴の妖艶ぶりはかなりいい。トリックにおいても、変装していく様子をそのまま描いているし、『人間椅子』もどきの設定においてもわかりやすく、推理を楽しむより格差社会であるとか人間の持つ金に執着する醜さを感じ取ったほうが良さそうだ。
美しいものに目がないと言っておきながら、人を騙すかのような偽物を売りつける金満家岩瀬。「世界中の金は俺のものだ」とも言わしめる脚本は見事。さらに同じく美しいものが大好きな黒蜥蜴も宝石に限らず、人間そのものの美しさにも魅了され、博物館にはそうした男女の剥製が飾られているほどのおぞましさも見どころだ。クライマックスでは「さーて、本物はどっちだ?」と言わんばかりの謎かけもあるし、結局、人間が美しいもの醜いものと判別することも愚かしいことだとメッセージを投げかけているような気がしました。もうちょっとエログロが描かれてたら高得点。
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