「21世紀の現代人は、心と心を触れあわせることの出来ない生き物になってしまっていないでしょうか?」黒い十人の女 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
21世紀の現代人は、心と心を触れあわせることの出来ない生き物になってしまっていないでしょうか?
テレビ局が舞台です
昔も今も24時間切れ目もなく稼働し続けている仕事場であることを本作は丁寧に紹介します
岸恵子が演じる市子は、テレビ局プロデューサーでプレイボーイの風にこういいます
あなたは(ピーターパンのように)影の無い人だって誰かにいったことがあるけど、現代の社会機構の中に巻き込まれると誰でもそうなるのよ
忙しく飛び歩いて事務的な事の処理は大変上手くなるけど、心と心を触れあわせることの出来ない生き物になってしまうのよ
女が男に求めることはもう無いのよ、あなたの中には
この台詞こそが本作のテーマだと思います
21世紀の現代においては、ネットによって24時間オンラインで繋がって、男も女もいつオンだかオフだかよくわからない状態に置かれているのです
本作のテレビ局員のような忙しさはいまや普通の人々までそのような生活を送っているのです
新幹線や飛行機で飛び回ってもいます
ハッと気がつけばCAでもないのに1週間毎日飛行機に乗っていた、どうりで疲れる筈だとか
しかも、それでいてPCやスマホで仕事を進行させながらです
こんな生活をを続けていると、ナチュラルハイになります
高ぶった精神を鎮める場を求めて、疲れているのに深夜にバーに繰り出して強い酒を煽ったりするようになるのです
人によっては本作の風プロデューサーのように女性に向かうようにもなります
風の行動は非常識なものですが、とても納得できるありそうな行動だと、自分には経験からそう思います
そうです
心と心を触れあわせることの出来ない生き物になってしまっているのです
これが昨今の結婚しない男女が増えている本当の原因のように思えてなりません
本作は21世紀の現代の社会機構の問題を60年も前に正確に予見していたのだと思います
スタイリッシュなフランス映画を思わせる映像と音楽は他の日本映画にはみられない素晴らしいものです
モンキーパンチの初代ルパン三世をどことなく思わせる程です
ラストシーンの夜の国道
道端で横転して炎上する事故車はこれから起こることを暗示した不安の余韻を残す見事な終わり方でした
日本映画オールタイムベストにリストアップされて当然の傑作です