劇場公開日 1961年6月17日

「小説から3作品が映画化。どれも主人公が些細なことから転落する悲劇的有り様を描いた内容ですが、実に面白いです。」黒い画集 ある遭難 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5小説から3作品が映画化。どれも主人公が些細なことから転落する悲劇的有り様を描いた内容ですが、実に面白いです。

2025年5月11日
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鑑賞方法:映画館

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神保町シアターさんにて特集企画『横溝正史と松本清張――映画で味わう至高のミステリー対決』(2025年5月3日~30日)開催中。
本日は『張込み』『黒い画集 ある遭難』『けものみち』の松本清張作品3作をはしご鑑賞。

『黒い画集 ある遭難』(1961年/87分)
松本清張氏の短編推理小説シリーズの一編。
本作含め、小林桂樹氏主演・橋本忍氏脚本の『あるサラリーマンの証言』(1960年)、池部良氏主演『第二話 寒流』(1961年)と3作品が映画化、どれも主人公が些細なことから転落する悲劇的有り様を描いた内容ですが、実に面白いです。
因みに『天城越え』(1983年)も本シリーズの一編になるそうです。

本作では同じ会社に勤める3名が北アルプスで遭難、うち1名が転落死。
その後、生存者が執筆した当日の手記に疑問を持った転落死した弟の姉から相談を受けた山のエキスパートの従兄が、弟の献花を事由に疑惑の上司を誘い、再度同じ行程で転落場所まで
向かうという内容。
まだ撮影機材が軽量でない65年以上前に本格的な雪山でのオールロケを行ったのが見どころ。『八甲田山』同様、かなりハードな撮影だったと画面越しからも伝わります。
山を登りながら徐々に疑惑の上司の本性や矛盾点を暴き出す、従兄役の土屋嘉男氏の迫力も痛快です。

矢萩久登