狂い咲きサンダーロードのレビュー・感想・評価
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北原美智子
一番強かったのはこの俳優さんの役だったのではないだろうかと思う程、常に目が追ってしまう存在であった
特にベッドシーンでは、交わう演技ではなく、朝のイチャイチャシーンなのだが、あの時代ならではのレンズを通した生々しさのある素肌や健康的な肉付きが、デビュー当時の榊原郁恵を思い出してしまう程、ガロ等の風俗写真誌を彷彿とさせるギラギラ感が再現されていた
作品内容自体も、エログロ暴力ナンセンスで、政治色も社会問題も同じ釜で煮染めた昭和時代をデフォルメした作品である
確かに自分が12才の時って、現在の暑さ程じゃないにも関わらず、やたら社会自体が熱かった感覚が思い出される
もしあの時代に今作を鑑賞したとしても、自分とは正反対なテーマ性に拒絶することは火を見るよりも明らか
今観て、初めて客観視できる、俯瞰した感想を持てるのであろう
序盤の会合での周りの"ガヤ"のうっとうしさや、蛇足感にあの時代の無頓着なデザインの無さに、丸でパンよりもやたらと大量なバターやジャムのアンバランスさと、それでも構わないアクの強さは、現在の視点だからこその感想
ヤクザや右翼や暴走族やら、日本の消費尽くされる文化の進化形が『HiGH&LOW』に通じる系譜の、歴史を紐解く考古学の見地としての作品とも取れる
結局主人公が独りになるが、その黄泉比良坂で初めて願いを叶える連中は、勿論最後迄は付合わないドライさも時代背景をキチンと反映していて、興味深い その失踪先は阿蘇山だろうか?・・・ 最後の最後迄沸点の高い情熱のみで完成させたカルト作品である
上等じゃねぇよ!やってやろうじゃねぇよ!
Blu-ray(オリジナルネガ・リマスター版)で鑑賞。
バイク、ロック、バイオレンス、ベンジェンスに彩られた、日本映画界に狂い咲く一輪の徒花。石井岳龍(聰亙)監督の鮮烈なデビュー作であり、キネマ旬報ベスト・テンにランクインする快挙を成し遂げたインディペンデント邦画の名作。
学生の卒業制作とは思えない完成度に目を見張りました。と云うか、学生映画に対して粗探ししても無意味である気がしました。予算が無いなりの工夫を凝らして映画をつくっていることへ、その涙ぐましい努力に心からの拍手を送るのみ。
観る前の「マッドマックス」的世界観なイメージは当たらずとも遠からず。迎合への抵抗、枠に収まり切らない衝動は若者の反抗精神の昇華のようで気づけば心が熱くなっている。
右手・右足を切り落とされても漆黒のバトルスーツに身を包み、サンダーロードへ殴り込みを掛ける仁の姿は、反逆と復讐に燃えたぎる鬼神の如く画面から迫って来ました。
デスマッチ工場跡。バトルロイヤル広場。スーパー右翼本部など、登場する名称の数々のネーミング・センスが絶妙でクスリとさせられ、力が抜けそうになりました。
時折挟まれるユーモア(さりげなく入れ込む手腕も巧妙)と云うか、過剰な暴力の中にふとした滑稽さを織り交ぜたことで余計に凄惨な面が際立って来るようでした。
常識を「上等じゃねぇよ!やってやろうじゃねぇよ!」とぶっ壊しながら恐るべきテンションを保ち、ブレーキどうすんだよ状態で激走する爆走少年のような映画に魅せられた!
[余談1]
泉谷しげるが監修した楽曲たちが見事にハマって、世界観を補強しているように感じました。場面場面に相応し過ぎる曲が流れ、画面を巧みに盛り上げてくれているなぁ、と…
程良く力の抜けた歌声が荒んでいる彼らの生き様を物語っていました。なんだか上手く表現できない。自分の語彙力不足が腹立たしい限り。とにかく素晴らしい歌ばかりでした。
[余談2]
ヤク中喫煙少年を出す辺り只者じゃないと思いました。ヤクをキメるシーンはさすがにモザイク掛かってましたが(笑)。
低予算ゆえの衝動と惜しさ
異様なポスターのビジュアルとあらすじのインパクトに惹かれて鑑賞。最初は何が起きているのかよくわからなかったが、話と舞台のあらましが見えてくるにつれてわざとらし過ぎる荒々しさと、泉谷しげるやパンタの曲がハマりまくった疾走感に魅了されてしまった。大人びて丸くなるのを頑なに拒み、自分の思うがままに生きることを選んだ少年の明日なき暴走の末路ってっ感じだったが、暴力に次ぐ暴力の中で生き様に殉じるのは格好良いなあと思いながら観ていた。片手片足を失ってなおバイクに乗り、「ブレーキはどうするんだよ」という問いに何も言わず笑ってアクセルを踏み込むラストシーンは最高に痺れた。バトルロイヤル広場とかスーパー右翼とかあまりにも馬鹿馬鹿しいネーミングセンスや台詞からは話の緊迫感を壊さない程度の絶妙な笑いも感じられてメリハリよく見ていられるのも凄い。惜しむらくは、低予算のせいか古いフィルムのリマスターのせいか単に言葉遣いのせいか、聞き取りづらかったり何が起きているのか判断しづらいところがあったことと、終盤の登場人物がポッと出てきた割には重要な役割を果たしたことに違和感を感じたことだろうか。それと健さんの謎ベッドルームのシーンも謎だったが…。粗削りな部分もあったけど、それ故に却って疾走感や焦燥感がほとばしる。上質な?パンク・ロックを映像化したらこんな感じなんだろうという、熱量溢れる傑作だった。
すごくよかった
「仁さんって童貞じゃね?」と子分に陰口を叩かれているのが非常につらかったのだが、その後しっかり彼女とベッドにいて胸をなでおろした。
ちょうどパラリンピックが開催されている時期に見ていて、仁さんの人生は思い切りがよくそれはそれで素晴らしいのだが、選手たちは仁さんみたいにならずスポーツに取り組んでいた。
ただ、右翼を辞めてから腕を切られるまで派手に寝てしまい、後悔してもしきれない。クライマックスは完全に目が覚めて、すごくよかった。
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