「【”人間に戻ります!と出世するために手段を選ばなかった男は元上司に決然として言った。”今作は人間の愚かさ、可笑しさ、ヒューマニズムを全て取り入れた脚本とW主演の二人が素晴しき逸品である。】」アパートの鍵貸します NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”人間に戻ります!と出世するために手段を選ばなかった男は元上司に決然として言った。”今作は人間の愚かさ、可笑しさ、ヒューマニズムを全て取り入れた脚本とW主演の二人が素晴しき逸品である。】
ー 昨年秋から当方が生まれる前の、世に言われる”名画”を少しづつ夜中に鑑賞している。
私事で恐縮であるが、未だ不惑なのに老眼の為に読書量が激減した事と、配信の技術普及による。
私は、映画は映画館で観るべきという主義であるが、地域によっては映画館がない方も多いだろうし(実際、私の居住県でもここ数年で多くの劇場が閉館になってしまった。)その点については、言及する積りはない。-
■多くの方が粗筋を御存じであろうが、初見の青二才なので簡単に。
ー 大保険会社の平社員・バド(ジャック・レモン)は自身の出世のために、上役たちの部長の逢い引きの場として昼間、自分の部屋を提供していた。
そんな中、人事部長のシェルドレイクは、バドが思いを寄せるエレベーターガールの女性・フラン(シャーリー・マクレーン)を部屋に連れ込んでいた。
その事実を知り、ショックを受けていたバドが、クリスマス・イヴに部屋に帰ると、フランが睡眠薬を過剰摂取し、意識不明になっていた・・。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・最初は、バドの事を仕方がない奴だなあ、と見ていたのであるが、それに輪を掛けて愚かしき部長5人の姿が、愚かしくも面白い。
ー 大体さあ、人事部長程度で愛人を囲う場所も持たないシェルドレイク君。器が小さいぞ!しかも妻子持ち・・。更に言えばクリスマス・イヴでのフランとの密会での贈り物がクシャクシャの100ドル札ってどーなのよ!。そりゃあ、フランが自棄を起こすよな!-
・シャーリー・マクレーン扮するフランも可愛いのだが、彼女も部長たちとイロイロ有って・・。そして、彼女が持っていたコンパクトの鏡の割れ目が意味する事。
・けれども、クリスマス・イヴに女連れで帰宅したバドは睡眠薬過剰摂取した意識不明のフランを発見し、隣人の医師を叩き起こし胃洗浄をして貰い、危機一髪で助けるのである。
ー 亭主をカストロに幽閉された一人クリスマスイヴを過ごすマージが少し可哀想だが・・。-
・漸く目を覚ましたフランを懸命に介抱するバド。
ウトウト眠ろうとするフランに対し、一生懸命にカードゲームをするように誘い眠らせない様にする姿や、テニスラケットで茹でたパスタを受け取るシーンや(水を掛けては駄目だよ!)バドの出世第一主義の心が変わって行く過程をホロリとするシーンも含め、面白く描いている。
ー とにかく、ショート・カットのシャーリー・マクレーンが可愛いんだよね。-
■告げ口により、シェルドレイクにより、馘首された元秘書、ミス・オルセンの進言により自分も首になったシェルドレイクに、バドが決然として言った言葉。
”人間に戻ります!”
そして、彼は会社の要職の椅子を蹴って会社を辞めるのである。
<ラストも粋である。
バドはフランに初めて、秘めていた愛を告白する。
そんな彼の真面目な表情を見て、彼が自分を助けるためにカードゲームを勧めてくれた事を思い出したのか、テーブルに在ったトランプを取って、”黙って配って・・。”とフランは微笑みながらバドに言うのである。
もうね、ホント今作のラヴ・コメディのレベルの高さには参りました・・。>