「ア・カ・イ・ケ・イ・ト・ノ・タ・マ」女王蜂(1978) たーちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
ア・カ・イ・ケ・イ・ト・ノ・タ・マ
石坂浩二さん主演。市川崑監督による金田一耕助シリーズの4本目です。
それまでの作品がかなり緻密に出来ていただけにとても期待しての鑑賞です。この作品は未見でしたので、かなり期待しての鑑賞だったのですが、今一つだったというのが印象です。
俳優陣はいつもの金田一シリーズメンバーに各作品でのメインキャストをしていた高峰三枝子さん、岸恵子さん、司葉子さん。それに仲代達矢さんが出演するとなれば期待は膨らみます。
一番は金田一耕助に捜査を依頼した加納弁護士(大滝秀治)があまりメインで出演していない事が大きかったと思います。何でこの探偵がここまで深く関わっているのかが、明確でなく警察の等々力警部(加藤武)や山本巡査(伴淳三郎)と同列にそんなに違和感なく存在しているのが不思議でした。
トリックの部分も九十九龍馬(神山繁)が殺された密室トリックも設計したのが大道寺銀造(仲代達矢)の知り合いだったから銀造にとって密室ではなかったという部分はありますが、3本の刀をどうやって発射(?)させて、九十九を殺害したのかまでは描かれていません。
あとは何といっても智子役の中井貴恵さんの演技でしょう。この当時はあの佐田啓二の娘という事でのデビューだったと思うのですが、あまりの大根役者振りはかなりのものです。
この「女王蜂」というのは誰の事を指すのでしょう。
男を翻弄していくという意味では智子役の中井貴恵なのか。銀造の為に自己犠牲をするという意味では神尾秀子役の岸恵子なのか。全部の大元を作ってしまった東小路隆子役の高峰三枝子だったのか。元の銀造と仁志(佐々木勝彦)の両方から好意を持たれた琴絵役の萩尾みどりだったのか。
何を意味しているのかが良くわかりません。
あと最初良く分からなかったのは九十九役の神山繁さんです。少し頭髪の薄いイメージの神山さんが長髪の髪型で出演されていて、最初誰だか分からなかったです。それに智子を犯そうとするシーンもあって、何かとてもミスキャストだった気がします。
ラストで金田一さんが毛糸の編み記号で秀子の遺書を毛糸玉から出すシーンがありますが、かなり無理があるなと思いました。
ただこの赤い毛糸玉とラストで金田一さんが列車の中で毛糸玉を落とす青い毛糸玉が対になっていて、とても印象的でした。
何と言っても市川監督の映像美は見事だと思いました。秋の野点のシーンは女優たちの見事な衣装と紅葉の赤が印象的です。綺麗でした。