劇場公開日 1977年4月2日

「うちの裏のせんざいに すずめが三匹とまって」悪魔の手毬唄(1977) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5うちの裏のせんざいに すずめが三匹とまって

2014年10月8日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

「犬神家の一族」に続く、市川崑&石坂浩二による金田一耕助シリーズ第2弾。1977年の作品。
ちなみにこの年は、シリーズ第3弾「獄門島」と、渥美金田一の「八つ墓村」も公開、TVでは古谷金田一も放送され、ブームの真っ只中!
市川&石坂コンビの金田一ムービーは「犬神家の一族」が有名だが、本作も引けを取らない傑作!

由良と仁礼の二代勢力が治める、人里離れた鬼首(おにこべ)村。
村に伝わる手毬唄通りに若い娘が殺されていく謎に、旧知の警部の頼みで、金田一が挑む…!

不穏な雰囲気の村、見立て殺人、複雑に絡む人間模様…横溝ミステリーのド直球!
ミステリーとしても勿論、この「悪魔の手毬唄」は、悲しい人間ドラマとして余韻が残る。
寂れた村の雰囲気がひときわ哀切誘い、市川崑による情緒ある画作りも堪能出来る。

本作の人間関係及び犯人とその動機は、以前「トリック」の某エピソードでもまんま模倣されていた。
一人の男に騙された村の女たちの哀しい因果が、子供たちへ。
ある理由から殺人を犯してしまう犯人、ある人物を手にかけてしまった時の犯人の悲痛、犯人を知った時のある青年の衝撃…哀しみの物語が情感たっぷりに綴られる。

ヒロインのリカ役の岸恵子と磯川警部役の若山富三郎が名演。
磯川警部の大人の淡い片想い物語としても秀逸。
石坂金田一はすっかり板につき、加藤武(名台詞「よし、分かった!」)、大滝秀治、三木のり平、小林昭二ら常連名脇役たちも健在。

欲を言えば、「犬神家の一族」のような名テーマ曲が欲しかった。本作の音楽も決して悪くないが。
また、古谷金田一のTV版では、村の若者の一人に夏目雅子を配するなど華があったが、本作の若者たちがちょっと地味…。あくまで大人のドラマという事で。
(古谷金田一のTV版“横溝正史シリーズ”の「悪魔の手毬唄」も名作なので、興味がある方は是非♪)

これ以後のシリーズは少々精彩を欠いてしまったのは残念だが、邦画史に一石を投じた名作ミステリーシリーズなのは異論ない。
やっぱり、この世界観は大好きだ!

近大