「理想を求め続ける姿」銀河鉄道の夜 komasaさんの映画レビュー(感想・評価)
理想を求め続ける姿
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映画でも原作でも数十年ぶりの鑑賞。
前半の話を、蠍座の件から終わりへ向けてなぞり返していく綺麗な流れ。絵や音のセンスが凄く、変化に乏しく感じる表情や声も下手に感情移入させることなく客観的に観られて良かった。
宮沢賢治の作品は想像力と感受性に富む子供の時に読むのが一番良いと思う。ただ、この作品は大人になってようやく話の意図が見えてきた気がする。
昔は鳥捕りの男は何故存在しているのか分からなかった。しかし彼は大人である私だ。そしてジョバンニの父であり、ジョバンニが大人になった姿でもある。だからこそ、彼がいなくなった後にジョバンニは、「彼のことが嫌だった。でも彼と色々と話しておけばよかった」と後悔する。そしてその後、どこまでも一緒に行こうねと約束したカンパネルラ(理想の象徴?)を失い、代わりに父親(現実の象徴?)を得て日常へ戻って行く。ある意味王道の成長物語だ。
ただ、この話の深く切ないところは、宮沢賢治がジョバンニを肯定しつつも自分はカンパネルラでありたいと思い続けているところ。その確固としているけど儚いところに当時の死との距離感、人生の濃さを求める姿が垣間見える気がする。
なぜ猫の姿なんだ等と細かな事を考えずに、ただ見て感じて欲しい作品。
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