劇場公開日 1982年9月18日

「仕事は他人事」疑惑 K・Mさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 仕事は他人事

2025年8月14日
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2時間もイスに座らせて飽きさせないのは至難の業だが、その為に盛り込みすぎて散漫になるのがよくある苦労の上の落とし穴。

本作は各々がそれぞれの持ち味を活かして、流行りや仕掛けに頼らず、巧みな原作を土台に飄々と魅せてくれる稀有な一本だと思う。

被告人の桃井かおりは〈腹に一物ある〉ふてぶてしさ、弁護士の岩下志麻は〈腹が読めない〉ふてぶてしさでお互い、己の所業を仕事であり、どこか他人事と割り切っている。そこが実にいい。

妙に憎めない三枚目の鹿賀丈史も掌返しが小気味いいし、山田五十鈴の啖呵も心地よい。往年の名優陣を偲ぶ意味でも距離感が安定している。

感情移入は必要だが、観客を過剰に引きずり込む必要は無い。これはどう展開して行くのか、成り行きを見届けたいと思わせ続ければ良いだけだから。そもそも、映画の中の出来事なんて他人事なんだから。

K・M
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