劇場公開日 1982年9月18日

「【”レッテルを貼る。”今作はアンニュイどころではない悪女演技が物凄き桃井かおりと岩下志麻の性格キツイ女弁護士キャラが屹立した見事なる法廷劇であり、子を思う親の気持ちを描いた映画でもある。】」疑惑 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”レッテルを貼る。”今作はアンニュイどころではない悪女演技が物凄き桃井かおりと岩下志麻の性格キツイ女弁護士キャラが屹立した見事なる法廷劇であり、子を思う親の気持ちを描いた映画でもある。】

2025年5月21日
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■富山県の新湊の埠頭で車の転落事故が起きる。乗っていた地元の大酒造の社長、白河福太郎(仲谷昇)は死亡したが、クラブの女だった後妻の球磨子(桃井かおり)は助かる。
 福太郎には球磨子により、保険金三億一千万が掛けられており、彼女の太々しい態度から保険金殺人が疑われる中、確たる証拠がないまま球磨子は逮捕される。
 彼女の国選弁護人となった佐原律子(岩下志麻)は、球磨子の傲慢で横柄な態度に反感を覚えつつ、確たる証拠がない事にも注目していた。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・私の年代にとっては、桃井かおりさんは少し鼻声のアンニュイな雰囲気漂う女優さんと言うイメージがある。そして、岩下志麻さんは、和服の似合う怖いヤクザのお姉さんのイメージがある。”レッテルを貼る。”である。

・今作は面白き法廷劇であり、且つ悪女と言うレッテルを貼られた球磨子を演じた桃井かおりさんの、物凄い悪女演技と、それに真っ向から対抗する冷静だが勝気な国選弁護人となった佐原律子を演じた岩下志麻さんの、演技合戦映画である。

・序盤、法廷では、当初は誰もが球磨子が福太郎の財産及び保険金目当てで彼を殺したと思っている。そして、それを球磨子の法廷での太々しい態度が助長して行くのである。

・検察側の証人である目撃者(森田健作)や、球磨子の元恋人である仮出所中である豊崎(鹿賀丈史)は、”エドワード・ケネディ事件”を引き合いに出し、球磨子に不利な証言をして行くのである。

・だが、徐々に球磨子に惚れて一緒になったのは白河福太郎であり、彼はその事で母を含めて、一族郎党から厳しく諫められていた事が徐々に分かって行くのである。
 又、豊崎も佐原律子のアパートを訪ね、球磨子の普段は見せない、寂しい一面を語るのである。

■秀逸なのは、佐原律子が自ら運転していた車のブレーキと床の間に空き缶が挟まって、事故になりかけたシーンから、ずっと謎であった海中に水没した車の中に在った福太郎の片方の靴と小さなスパナの謎を解くシーンである。
 これは、ある自動車会社の高級車が十数年前に、アメリカで起きたブレーキの”故障”により乗っていた家族が亡くなった事故原因と酷似している。(但し、真の原因はブレーキが床のマットに引っ掛かったためであり、自動車会社の品質上の問題である。)
 そして、佐原律子は、福太郎の息子の証言も得て、その事故は福太郎による球磨子を道連れにした無理心中である事を証明するのである。
 福太郎が悩んだ末にこのままだと、球磨子の殺され財産の半分を取られ、息子に財産を残せないという思いから来た事が、法廷で明らかになるシーンは、法廷劇の中でも白眉の出来だと思うのである。
 そしてそれは、佐原律子自身も離婚した夫との間に出来た娘の存在が在ったからこそ、その事に気付いたのであろうという事が分かるのである。

<今作はアンニュイどころではない悪女演技が物凄き桃井かおりと岩下志麻の性格キツイ女弁護士キャラが屹立した見事なる法廷劇であり、子を思う親の気持ちを描いた映画でもあるのである。>

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