劇場公開日 1982年9月18日

「岩下志麻の映画だった」疑惑 タンバラライさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5岩下志麻の映画だった

2023年1月23日
PCから投稿

私は原作を読んでいるのでストーリー展開が遅すぎて退屈で見ていられなかった。原作も大して面白くなかったし。もう限界だから見るのやめよう・・と思ったその時、岩下志麻が出てきた。それは原作にはない設定で映画のために作られたものだった。その後の展開がとても映画的で素晴らしく上手くできていたと思う。どうでもいいようなくだらないシーンがいくつか入っていて時間稼ぎをしているが全体のムードを盛り上げるためと思えばそれも良かったと言える。事件を解決した主人公の頑張りとか実力とか人格というものが魅力となって輝いてる。
難を言うと人間ドラマに実がない。少年の部分がクライマックスになっているわけだがそれであの少年が成長してるようにも見えない。クライマックスの盛り上がりとして成功しているだけで人間ドラマとしては何か突き抜けたものがない。作者もそれを感じたのだろう・・実にするために主人公の娘の話が挿入されていたりクライマックスが終わってからごちゃごちゃ何かやっている訳だがどう見ても実になっていない。
ところで、この映画が作られたのは1982年。俳優たちを見ていて、この頃までは映画と言える演技をしているなあと思っていた。そしたらちょい役で山田五十鈴が出てきた。あのシーンには圧倒された。映画の全盛期の俳優の実力というものに。この映画がとられてから40年経って今の俳優はみんな学芸会レベルになってしまった。日本の映画を取り巻く事情からして、もう復活することはないだろう。残念なことだ。
とか、難は言ってみたものの映画はやっぱりスターが命。実なんかいらない。勝った負けただけで十分。それだけの方がむしろ面白いのかもしれない。そしてスターの魅力さえ伝われば良いのだ。幸い私はだいぶ年をとってきて熟女の魅力が存分に分かるようになった。この作品は岩下志麻の魅力がビンビン伝わってくる映画だった。岩下志麻は秋刀魚の味だけだと思っていたけどそうでなくてとても嬉しい。

タンバラライ