劇場公開日 1982年6月5日

「大スクリーンで観る夏目雅子氏は輝くばかりの美貌、息をのむ美しさ。 激しいシーンも体当たりで演じきっており、女優として脂の乗った時期の夭逝は本当に惜しいですね。」鬼龍院花子の生涯 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0大スクリーンで観る夏目雅子氏は輝くばかりの美貌、息をのむ美しさ。 激しいシーンも体当たりで演じきっており、女優として脂の乗った時期の夭逝は本当に惜しいですね。

2025年7月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

ドキドキ

約65年にわたって愛され続けた丸の内TOEIさんも7月27日(日)の閉館まで残すところあと1週間。
本日は『「鬼滅の刃」無限城編』が絶賛公開中の最中、五社英雄監督『鬼龍院花子の生涯』(1982)を鑑賞。

『鬼龍院花子の生涯』(1982年/146分)
監督・五社英雄氏、原作・宮尾登美子氏の大ヒット作。
夏目雅子氏のドスの効いた「なめたらいかんぜよ!」は流行語にもなりました。

ちょうど公開当時に高知県に在住。
本作同様高知(土佐)を舞台にした宮尾氏原作『陽暉楼』(1983)、『櫂』(1985)や、武田鉄矢氏主演『刑事物語4 くろしおの詩』(1985)、果てはTVドラマ『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』(1985放送)では2代目麻宮サキ(演:南野陽子氏)が土佐弁を披露と、にわかな高知(土佐)ブームに地元民として歓喜しておりました。
「ちゅーちゅー、にゃーにゃー、がーがー」の独特の土佐弁の言い回しとイントネーションに苦労したのは良い思い出、当時はまだ桂浜に「土佐闘犬センター」も営業中でした。

本作の面白いところは表題の「鬼龍院花子」が夏目雅子氏ではないところ。

土佐の侠客・鬼龍院政五郎(演: 仲代達矢氏)に12歳で養女として貰い受けられ、政五郎の義侠心あふれ豪放磊落な生き様や一家を取り巻くしがらみに翻弄されながらも、政五郎の反対を押し切り学問をおさめ小学校教師となる「松恵」を夏目雅子氏が演じ、「花子」は政五郎と妾の間にようやく産まれた一粒種のため甘やかされて育てられ無学、一家の人間関係に最後の最後まで翻弄され身をやつす悲劇的な女性を「松恵」とのコントラストを強く描かれています。

侠客の世界を肌身に感じつつ、決して周りに流されず自分の信じた道(学問・恋愛)に邁進するが、政五郎たちに育てられた影響で、内に激情を秘める女性に成長。
その発露が亡夫の分骨に難色を示す遺族に対しての「なめたらいかんぜよ!」の一発の啖呵セリフに凝縮されており見事です。

基本は鬼龍院政五郎の波乱万丈な生涯を描いた作品ですが、松恵(=女性)の目線から描いた点は、既存の任侠・実録作品にはない新鮮さと多くの女性も共感でき大ヒットも納得です。

大スクリーンで観る夏目雅子氏は輝くばかりの美貌、息をのむ美しさ。
激しいシーンも体当たりで演じきっており、女優として脂の乗った時期の夭逝は本当に惜しいですね。
また松恵の少女時代を演じた仙道敦子氏も名演。
少女時代(仙道氏)から大人(夏目氏)へのオーバーラップは違和感なく驚きでした。

矢萩久登
PR U-NEXTで本編を観る