君は海を見たか
劇場公開日:1971年5月5日
解説
テレビで放映された同名作品の映画化。原作・脚本は「昭和元禄 TOKYO196X年」以来、映画から遠ざかっていた倉本聰。監督は「太陽は見た」の井上芳夫。撮影は「タリラリラン高校生」の中川芳久がそれぞれ担当。
1971年製作/83分/日本
配給:ダイニチ映配
劇場公開日:1971年5月5日
ストーリー
大和造船所の設計技師増子一郎は、仕事に忙殺され、正一のことは、妹の弓子に任せたままだった。一郎の出張中、正一は身体の異状を訴え、弓子はすぐかかりつけの和田小児科病院へ連れていったか、詳しい原因が判らぬまま、大学病院に移された。精密検査の結果、木口博士の口から殆んど助かることのない癌であることが一郎に伝えられた。悪くて一、二ヵ月、もちこたえたとしても三ヵ月の生命であり、手術をしてもその可能性は零コンマ以下の確率でしかないという。再婚を間近に控えた一郎には悪夢を見ているようで信じられなかった。そして、この恐ろしい現実が確かなものであると知ったとき、彼の胸に苦い後悔が押し寄せてきた。正一の書いた新しい家の設計図を、仕事を理由に見てやらなかったことも、そして二ヵ月も前に、正一が腹部にしこりができているという訴えをなま返事で聞き流していたことも、すべてが彼を苦しめずにはおかなかった。一郎は、休職願いを出し、正一に残された時間を一緒に過ごそうと決心した。彼は、かつて、正一の担任教師大石から、正一は青い海を見たことがないということを聞かされ、土佐の真っ青な海を見に連れていくことにした。正一は狂喜し、はしゃぎ廻った。しかし時間は流れ、何の奇蹟も起こらないまま正一は静かに死んでいった。彼に残されたものは、黒い海しか書けなかった正一が、土佐の真っ青な海を描いた絵だけだった。