「第二小隊最後の戦い。 正しい資質よ、永遠なれ!」機動警察パトレイバー2 the Movie たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
第二小隊最後の戦い。 正しい資質よ、永遠なれ!
警視庁警備部特車二課第二小隊の活躍を描くロボットアニメ『機動警察パトレイバー』シリーズの、劇場版第2作。
横浜ベイブリッジ爆破に端を発するテロ事件に、特車二課の面々が立ち向かう。
監督は前作から引き続き押井守が務めている。
陸上自衛隊幕僚監部調査部第二課別室に所属する陸上自衛官、荒川茂樹の声を演じるのは『私をスキーに連れてって』『シコふんじゃった。』の竹中直人。
パトレイバーの世界は作品ごとにパラレルであるとされているが、1998〜99年が舞台であるという設定は共通している。
しかし、本作で描かれている時代は2002年。
他のどの作品より時系列が後ということもあり、お馴染みのメンバーは後藤隊長、南雲隊長、シゲさん、ヒロミちゃんを除き散り散りになっており、また「バビロンプロジェクト」の完了により都内からレイバーが少なくなった為レイバー犯罪も減少し、レイバー小隊は益々無用の長物となっている。
映画全体に流れるのはそこはかとない無常感。「あぁ、これまでの楽しい祭はもう終わってしまったんだ…」という雰囲気に満ちている。
この空気感はファンであればあるほど耐えがたい哀しみとして胸に迫ってくるでしょう。
だからこそ、終盤にお馴染みのメンバーが後藤隊長の下に集い、事件に立ち向かう場面は燃える!!
「祭りの最後にドデカい花火を打ち上げたるでっ!」という感じで、めちゃくちゃワクワク!!
前作はエンタメ重視でギャグも多めな、『パトレイバー』の劇場版らしい作品だったが、本作はそれとは方向性が全く異なる。
『パトレイバー』のロボットアニメ的な要素を極限まで薄くして、その分非常に押井守的な、安穏としている日本社会に対し問題を提起をするかの如きポリティカル性をぶち込んでいる。
基本的には会話劇であり、結構重要なポイントもセリフで流したりするため、集中していないと今どういう状況なのか、何故こうなっているのかよくわからんという事態に陥ってしまう。
何本か押井守作品を観ていれば「まぁこんな感じだよねー」と受け止められるが、押井守に耐性がないライトなパトレイバーファンにとっては凄く退屈する作品かもしれない。
何やらごちゃごちゃしているが、要約すると自衛隊内部の過激派によるクーデターの話。
戦争から目を逸らし続けることで獲得した平和の虚構性であるとか、警察内部の権力争いとか、クーデターは手段では無くそれ自体が目的であるとか、そんなややこしいあれやこれやを鍋にぶち込んで哲学的なワードとリアリティのあるアニメーションでぐつぐつ煮込むとこの映画は出来上がる。
個人的にシビリアン・コントロールがどうだの、米軍の政治的介入がどうだのというポリティカルな物語にはあまり興味がない。
ただ、パトレイバーのキャラクター達の活躍が見たいのである。
とはいえ、ポリティカルな問題を扱うことでこれまで脇役だった後藤隊長や南雲隊長を主役に据えることが出来、その結果従来の作品とは一味違う、パトレイバーの世界をより拡張するような独特な作品が出来上がっていることは事実。
パトレイバーファン=後藤隊長ファンと言っても良いと思うので、後藤さんの有能ムーヴを堪能できるだけでも本作は一見の価値がある。
個人的に本作で一番好きなのは、オープニングで野明が試作機のテストをしている場面だったりする。
驚異的な作画のクオリティもさることながら、遊馬と野明の関係が進展したことをさりげなく描いていた点が良かった。
野明の耳にピアスがある!これまでの野明なら絶対にしなかった筈なのに…これはつまり、ってことですよね。上手い演出だなー。
時代設定的にも話の内容的にも、パトレイバーの最終回といって良いでしょう。
ややこしいし難しいけど、クライマックスとして申し分のない作品だった!!
陸幕調査部の荒川の扱いがなんか中途半端で、結局何がしたいのかよくわからないとか、ラスボスである柘植に魅力がないとか、そもそもたった1人で、しかも数年でクーデターを起こせるほどの戦力を揃えられるのか?とか不満点、疑問点もあるが、個人的にはかなり好きな作品です!