ガンマ第3号 宇宙大作戦のレビュー・感想・評価
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邦画エイリアン最恐にして深作SFベスト!
東映特撮1968年の作品。
時々当たり外れの差が激しい東映特撮。『怪竜大決戦』は面白かったが、『海底大戦争』は…。
こちらは『海底大戦争』と同じ日米合作で、未来の宇宙が舞台の完全SF。何やら珍品の匂いしたが、何の何の!
これが面白い!
22世紀。巨大遊星“フローラ”が地球と衝突の危機。国連宇宙センターからの命を受け、宇宙ステーション“ガンマー3号”は核爆弾を仕掛けフローラを爆破する任務に当たる。
作戦は成功、フローラは粉砕された。が…
フローラで見掛けた謎の緑の粘液が宇宙服に付着。やがてそれは成長~増殖し、クルーたちに襲い来る…!
星が地球に迫り来る!…というのはこの時すでに東宝で『妖星ゴラス』があったが、本作ではあくまで前座。メインは謎のグリーン・モンスターの方。
ハリウッド作品的に言えば『アルマゲドン』×『エイリアン』を、僅か77分の尺に収め、手頃にかつ面白味やスリルやSF特撮の醍醐味もあって、何とお見事天晴れ!
今見れば特撮は多少チープさを感じるかもしれない。
が、ステーション内のセットやメカニックやエイリアンのデザインもなかなかで、本格的な“SFムービー”になっている。
ドラマ部分も大人向け。主人公と因縁あるライバルのドラマはサブ的ながら見応えあり。
キャストはオール外国人で、吹き替え。
日本の特撮SF映画というより1960年代のハリウッドの特撮SF映画を見ている気すらした。
宇宙ステーション内で繰り広げられるクルーたちとエイリアンの闘い。
鳴き声は奇妙だが、このエイリアンが思いの外脅威的。
電力で成長。あちこちに電力が通ってる宇宙ステーション内はこのエイリアンにとっては最適の成長の場。
不気味な造型。電力蓄えた触手で攻撃、あらゆるものを焼き切る。
最も恐ろしいのは増殖力。どんな細胞レベル、血の一滴からでも増殖。成長速度も我々の常識は通用しない。
何だか見てたら、邦画のエイリアンの中では、ひょっとして最上級の脅威なのでは…?
たった一つの粘液から、あっという間に増殖。群れを成して。
こんな奴らがもし、地球で増殖したら…?
ここで食い止めるしかない。
ステーションもろともエイリアンを大気圏突入で燃焼させる決死の作戦に出る…!
監督は深作欣二。
まだ『仁義なき戦い』を手掛ける前。
やくざ映画の他にも様々なジャンルを手掛け、SFも本作以外に後年に『宇宙からのメッセージ』や『復活の日』など。
深作SFではその2本の方が有名かもしれないが、個人的には面白さは本作!
良き拾い物であった。
日米伊合作
深作監督(当時38歳)がオール外人キャストで撮った宇宙物、外人キャストと言っても在日の軍人さんなど殆どは素人、米国からの持ち込み企画でしたが元ネタはイタリアのガンマ・ワンと呼ばれる宇宙ステーションを舞台とした冒険SFのTVシリーズです。
CGは無い時代ですから特撮ものなら日本で撮る方が安上がり、東映の方も販路拡大を狙っていたのでしょう。米国向けは「グリーンスライム」というタイトルで90分、日本語版は指揮官と女医の三角関係のもつれなど軟派な所をカット、音楽も津島利章(米国版はチャールズ・フォックス)で特撮風にした77分バージョンで製作されました。
深作SFの真骨頂は本作の10年後に撮ったスターウォーズの向こうをはって里見八犬伝を基にしたスペース・オペラ「宇宙からのメーッセージ(1978)」の方でしょうが本作も凛とした主人公、ヒーローものとしてみれば監督の硬派路線が伺えます。
残念なのは怪物が頂けない、アメーバ―の時は液体人間風で怪奇的ですが変態すると一つ目の妖怪風で陳腐、もっとも着ぐるみの中は子供たちなので動きももっさりで格闘は無理、造形に制約もあったのでしょう、これでは深作監督の持ち味のバイオレンスが描けませんね。
プロットとしては惑星衝突の危機と宇宙生物の恐怖の合体は良いですね、今では当たり前ですが本格的に扱っていれば後の「アルマゲドン(1998)」や「エイリアン(1979)」クラスの先駆けにも仕上げられたのに惜しい気がします。特撮の渡辺 明さんは円谷監督の片腕だった人ですから東宝特撮に引けを取りませんが、子供向けと手を抜いたのでしょう、返す返すも怪物デザインは残念でした。
アルマドゲンとエイリアンの元ネタになった重要作品
これはおもしろい!
隠れた名作です
アルマドゲンとエイリアンの元ネタだというのは明らか
その意味でも重要作品といえるでしょう
地球衝突コースの小惑星というモチーフは1962年の東宝の特撮映画 妖星ゴラスからのモチーフ
メテオ、アルマドゲン、ディープインパクトとおなじく、本作も妖星ゴラスのチルドレンです
小惑星爆破のシーンはアルマドゲンそのもので、宇宙艇が小惑星に着陸して、そこから掘削車をだし複数地点に核爆弾を埋設する、しかも爆破後には雨霰と破片が宇宙艇を襲うのだから原案権を請求しても良いレベル
中盤からはエイリアンの元ネタになります
着陸した未知の天体から持ち帰った宇宙生命が宇宙ステーション内で密かに増殖する
乗組員達はその不気味なほとんど不死身の宇宙生命と戦うが次々と倒されて行くのです
これもまた本作が原案としてリドリースコット監督にもの申してもいいのではないかというレベルです
もう一つ
ひょっとすると英国のアンダーソンが人形劇をすてて、謎の円盤UFOで人間劇に転換するきっかけを与えたようにも思えます
というのも、本作の俳優は全員外人、何しろ日本人は一人も登場しません
日本の特撮を東洋人でなく西洋人だけで演じる映画にすれば、世界的な市場性がある、つまり力のある競合に欧米市場を奪われかねないことにアンダーソンは危機感を抱いたのだと思います
またランキン中佐の沈着冷静時に冷酷なキャラクターはストレイカー司令官
007サンダーボール作戦のボンドガールだったルチアナ・パルッツィが演じるベンスン女医は、レイク大佐とエリス中尉のキャラクターに反映しています
共に役者の面影まで似ています
あと、チープな宇宙生命体ですが触手系のものです
もしかしたら触手系のエイリアンは本作が世界初かもと思います
遊星からの物体Xは1982年、手の起源スピシーズは1995年です
1968年は、来年のアポロ11号の人類初の月着陸を控えて折からの宇宙ブームでした
2001年宇宙の旅、猿の惑星ともに当年4月の公開です
これを受けて日本映画界も急遽SF映画の製作にかかります
そこにハリウッドも比較的低予算で一定のクォリティーで特撮を撮れる日本映画界に目をつけ、両者の思惑が一致してにわかに日米合作のSF映画がこの1968年に2本製作されました
一つは老舗東宝と円谷プロの緯度ゼロ大作戦、
もう一つが本作です
テレビではキャプテンウルトラの実績がありましたが、本作は東映が製作する初めてのSF映画です
スターウォーズが大ブームとなる10年後の1978年には宇宙からのメッセージも、本作が土台となって製作されることになるのです
特撮は東宝で長年円谷英二の右腕であった、渡辺明が58歳で東宝を退社して1966年に創設した日本特撮プロが担当しているので東宝の特撮映画とクォリティーとほぼ同等の出来になっています
美術は小松崎茂ではないものの、影響を色濃く受けた宇宙船や宇宙ステーションのデザインです
宇宙ステーションや宇宙船などの内部セットのデザインは誰が手がけたものか分からないのですが、部分的に目の覚めるような、世界的レベルの美術デザインも散見され興奮させられます
例えば医療室の美術デザインは長岡秀星が手がけたかのようなそれは見事な出来映えで、謎の円盤UFOのムーンベースの施設としても通用するクォリティーがあります
しかしその美術に神経を張り巡らす集中力はまるでなく、チープで駄目な美術セットも多く、例えばエアロック前室の宇宙帽の棚の背後のロッカーは、普通の会社の更衣室にある鼠色の金属ロッカーです
あっという間に興奮は萎えてしまい、情けなくなってしまいます
この美術の駄目さ、軽視は時代劇には絶対に無い姿勢なのに何故特撮映画になるとそれが起きるのか?
それは特撮映画への蔑視、やる気のなさの反映なのだと思います
この傾向は21世紀の現代でも未だにあるのです
日本においてSFの映像作品はアニメにばかり優秀作品が製作されるのもこの辺り原因があると思います
肝心の特撮は当時の日本の特撮の平均レベルです
しかし世界レベルでみた時はどうでしょうか?
恐らく5年前なら世界最高レベルだったのでしょう
しかし1968年の秋から冬の時点で、すでに日本の特撮のレベルは欧米から遅れたものになっていることがハッキリしています
2001年宇宙の旅にも、猿の惑星にも、サンダーバードにも、合成でも、ミニチュアワークでも、美術セットでも、なにもかも立ち遅れていることが明らかに分かります
ガラパゴス化しているのです
日本の特撮の進化は60年代の怪獣ブームの中で止まってしまっていたことを本作は教えてくれます
このギャップは未だに埋まっていないように思います
いつの日にか、日本の特撮映画が再び世界の最先端に踊りでたと思える作品を観たいものです
音楽が妙に良いと思ったら巨匠津島利章の手になるものでした
UNSC とは国連宇宙センターの略
スペースコマンドかと思いました
アメリカ合衆国宇宙軍はUSSCです
なんか、はるか未来だったものが目の前に来ています
☆☆☆★★ 『サンダーバード』+『アルマゲドン』=『ライフ』٩( ...
☆☆☆★★
『サンダーバード』+『アルマゲドン』=『ライフ』٩( ᐛ )و
あれ〜(・・?) 宇宙ステーションが、どことなく『2001年…』に似てるんですけど〜…。
どちらも1968年公開…う〜ん、グレーゾーンだあ〜(^^;;
フイルムセンターの深作欣ニ特集にて。
これぞ 【T H E 特 撮】と言える楽しい作品でした(^^)
特撮を、ガッパやギララでお馴染みの渡辺明氏率いる日本特撮映画株式会社が担当しているのがミソ。60〜70年代のセット造形の懐かしさがまた堪らんでした(#^.^#)
まあ、欲を言えば。増殖する宇宙人軍団の皆さんの造形が、今ひとつだった事くらいでしょうか。
(着ぐるみ感満載なところには眼をつむりましょう)
出演していた女優さんを、何処かで観たなあ〜…と思って鑑賞後にググると。『007/サンダーボルト大作戦』のボンドガールだった(´ω`)
これはもう四の五の言う様な映画じゃあ無く、愛すべきSF特撮映画の佳作ですかね〜(他力本願)
2019年4月26日 国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU
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