「若尾文子の真骨頂」雁の寺 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
若尾文子の真骨頂
若尾文子映画祭で観賞。
全編、計算し尽くされた構図による、映画芸術の粋。
若尾文子の色香の極み。
徹底したローアングル、かと思えば俯瞰、深い奥行きに大胆な人物配置、そして超アップと、どこを切っても見事な構図。
若尾文子の和服姿は無敵。
モノクロ画面に浮かび上がる白い襟足と、太腿のチラリズム。
僧侶が女を囲うことが公然の秘密なのには驚く。
見るからに醜悪な色に惑う生臭坊主の、その庇護を受け入れて生きねばならない女の憐れと強かさ。
若尾文子の演技は決して同情を買うものではなく、運命に抗わず生きる強さがある。
男を狂わせる女の姿は、若尾文子の真骨頂だ。
小僧を追い詰めるのは、生臭坊主の方ではなく女だったのかもしれない。
ゆっくりしているようで、無駄がない物語進行。前半の謎めいた小僧の行動が布石となる。
そして、後半はねっとりとした緊迫感に包まれた秀逸なサスペンス。
エンディングのカラー部分は、なんだかなぁ。
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