「『怪獣見るんだったら映画館で見な―』」ガメラ 大怪獣空中決戦 モアイさんの映画レビュー(感想・評価)
『怪獣見るんだったら映画館で見な―』
……そら私だって映画館で怪獣が見たいさ!でも映画館にはいま怪獣がいないんですよ!!と本作で飛び出す名言に対してそんな思いがこみ上げてしまった訳ですが、それはともかく、なんでも今年はガメラ生誕60周年という事でのリバイバル上映だそうです。ガメラってまだ60歳なんですね。意外と若いし、それじゃこの映画の時って30歳だったんですか!?正に働き盛りだったんですね!!
この作品を監督した金子修介氏も特技監督を務めた樋口真嗣氏も未だに映画界で活躍されているは喜ばしいのですが、日本映画界において“特撮”はもはや風前の灯火であります。「ゴジラ-1.0」(23年)のヒットはまだ記憶に新しいのですが、かの作品はVFX作品であり特撮ではなかった訳で、それを維持するのに必要な人材も予算も子供も需要ももう残り僅かという絶滅危惧種“特撮”。その一つの到達点ともいえる本作を今回は劇場で鑑賞です。
なのですがえらい盛況ぶりです。連休中の映画館、日に1回の上映という事もあるのでしょうが、いくら歴史的な作品とはいえ30年前の特撮怪獣映画にこんなに人が入るとは思いませんでした。入場する時も退場する時も「ギャオス、ギャオス」とはしゃぐ高校生くらいの男の子2人組に、「前に観たのはいつだっけ?」などとオタク談議に花を咲かせる成人男性たち。微笑ましい感じの若いカップルに、何をしでかしたのか「そんなんだったらもう二度と連れてこないからね!」とお母さんに怒られているキッズ……もうねコレですよ、コレ!この雑多な感じが特撮怪獣映画を映画館で見るという事なんですよ!本編開始直前の暗くなった場内に慌ただしく駆け込んできて席を探す人もいれば、上映中も至る所からガサゴソと袋の中のお菓子を手繰る音が絶え間なく聞こえてくるのです。普段ならそりゃ殺意の一つも湧くところですが、特撮怪獣映画を見ているこの時だけはそれら全てが肯定されるんですよ!人出の少ないレイトショーでほぼ貸し切り状態の上映に甘んじていた昨今の自分を恥じますよね!人に紛れて映画を見る醍醐味が甦るのです!……まぁ初めて観る作品ではない事もその余裕を後押ししているのですが、ザワザワした上映中の劇場だとしても、けたたましく響く怪獣たちの咆哮や爆発音がそれらを搔き消してくれる瞬間の爽快感!!
スティーブン・セガールの娘が何故ガメラと繋がっているのか?その理屈よりも物語的な必然性の方がよくわからないのですが、話の通じなさそうな目付きで人を捕食するギャオスの怖さに、人類の脅威であるギャオスを倒すために戦っているのに自衛隊に迎撃されるガメラの悲しきヒロイズム!30年前の日本を舞台に九州から東京へと転戦しながら激突する、そんな二大怪獣の迫力に加え、平成特撮怪獣映画を代表するヒロインの座は、やはりゴジラと戦った沢口靖子の貫禄に軍配が上がるものの、巨大ペリットに薄手のゴム手袋で躊躇うことなく手を突っ込む中山忍の姿にグッときつつ、北京原人の本田博太郎。あまり特撮のイメージのない風吹ジュンの謎のカメオ出演に、やたら若い佐藤二朗も確認でき、当時のニュース番組でお馴染みの顔だったキャスター達がそのままの役で登場し、怪獣の襲来によって混乱する各種交通網の模様や証券取引市場の様子を伝えてくれ、この壮大な虚構に現実性を加味してくれています。と、見どころ満載の映画なのです。
押井守監督の「機動警察パトレイバー 2 the Movie」(93年)の流れを感じさせる、日本でこういう事態が現実に起きたらどうなるのだろうか?というシミュレーションに基づいた物語展開。防衛出動の判断という部分はサラリとしか触れられてはいないのですが、そもそもそこは今までの怪獣映画がほとんど触れてこなかった部分であり、ここに簡単にでも言及しただけでもう革新的なリアリティを本作は演出していたのです。そして実在の地名が頻繁に登場するのも、観る者の頭の中に「あそこら辺かぁ…」と地図を思い浮かべさせ、現実性を加味してくれているのです。こういう特撮技術によらないリアリティの演出は当然、「シン・ゴジラ」(16年)にも繋がっていく訳で、これらの演出は荒唐無稽な仮定を現実と照らし合わせてあれこれ夢想することの楽しさを教えてくれるのです。
そしてもちろん映像的な演出も抜群です。そもそも特撮とは実際には存在しないものをさも存在しているかのように映像に記録する撮影技術ですが、確かにその点においてはCGを駆使するVFXに比べると不利かもしれません。しかしこの日本で積み上げられてきた“着ぐるみ”“模型(ミニチュア)”“爆発”の特撮三元素(と私が勝手に言っているもの)が最高水準で満たされ、それを用いて抜群のセンスで描かれる二大怪獣の決戦はとてつもない迫力と存在感を帯びているのです。
ガメラもギャオスも表情豊かに(顔は動いてなくても体の動きで表情が見えてくるのです)、ミニチュアで再現された最終決戦地である六本木~秋葉原間の少々古びた建物が高密度で乱立する街並みの中、高速道路の高架や張り巡らされた電線越しにその巨体を見え隠れさせています。本作の同年まで展開されていたVSシリーズのゴジラは身長100mに達していたのですが、ガメラは大雑把に見ても15~20m程度の大きさしかありません。ですが、その分カメラの目線も低くなり、人の手で精巧に作られた模型の中に埋もれるようにして戦う二大怪獣を追うクライマックスシーンはワクワクの連続なのです。そして最後のコンビナートの大爆発・大炎上の思わず笑ってしまう程の迫力。
そういった“動”の演出も見事ですが、やはり本作を象徴するシーンと言えば、ギャオスが東京タワーに巣を作り夕焼けを背景に佇むというシーン。このシーンではあの間延びした調子で流れる防災行政無線放送が都民に外出自粛を呼びかけているのです。私は本作のこの正に“静”のシーンにこそ、日常の中に非日常を現出して見せる特撮の妙を見る思いなのです。
もはや歴史的資料と言っても過言ではない本作。シリーズの他作品も順次上映してくれるのは嬉しいのですが、もっと規模も期間も拡大して欲しいと欲張りな願望を抱きつつ、もし機会があればぜひ劇場で!
コメント返信ありがとうございました。
ガメラの復活、楽しみですね。でもCGになっちゃうのかな?
日本の怪獣映画はミニチュアと着ぐるみの歴史と認識してます。確かにCGの方が迫力あってリアルだとは思いますが、この伝統が無くなってしまうのも寂しい限りです。
共感、ありがとうございます。
やっぱり、ガメラと言えばギャオス!まさに宿敵です。昔の作品とは様相もかなり変わりましたが、正真正銘ギャオスで楽しませてもらいました。
共感ありがとうございます。
アツいレビューです!日本人の遺伝子には着ぐるみ怪獣遺伝子がミャクミャクと継承されてると思いますね。
上空から襲って来る、巣を作る、普通の鳥の習性を残してる所が怖いですね。


