「僕らのガメラが唯一勝てなかったもの」ガメラ対深海怪獣ジグラ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
僕らのガメラが唯一勝てなかったもの
シリーズ7作目。1971年の作品。
前作『対ジャイガー』は昭和ガメラ後期作品ではまずまずだったのに、またまた宇宙人地球侵略の珍作に逆戻り…。
あれ、監督や脚本家変わった…?
いや、変わらずの湯浅&高橋コンビだ…(^^;
前作は大阪万博とタイアップ。今回は鴨川シーワールドとタイアップ。
健一くんとヘレンちゃんは共に父親が鴨川シーワールドで働き、家族と宿舎で暮らしている。
ある日父親の海洋調査にこっそり付いていったら、海中から発せられた光線によって謎の宇宙船に囚われる。
そこに居たのは、ジグラ星人。
汚染によって母星に住めなくなり、地球を支配しようというのだ…!
う~む、ツッコミ所は多々。
同じく母星を捨てたバルタン星人は宇宙船にミクロ化してたくさん居るのに、こちらたった一人。
しかも、メチャ日本人顔のお姉さんで日本語ペラペ~ラ!
まあ一応、後から理由は明かされるんだけど…。それが無かったら史上ブッ飛びの侵略宇宙人!
さてジグラ星人、世界中で大地震を頻発させる。マグニチュード12クラス!
そして地球人類を降伏させる為に、何故か日本の東京でマグニチュード13の地震を起こす!
なのに何故か全く被害の無い鴨川シーワールド。タイアップ舞台だから被害は御法度だったのか…?
いつもながら子供たちの奮闘で脱出。
間抜けなジグラ星人お姉さんと、催眠術を掛けられボートでお昼寝タイムの父親たち…。
「助けてー!ガメラー!」と、助けに来てくれた僕らのガメラ。
でも、鴨川シーワールド近くの島に置き去り。オイオイ、ガメラさん、鴨川シーワールドに送り届けて下さいよ…。
ジグラ星人お姉さんは子供たちを狙う。セクシーなビキニ姿で鴨川シーワールドに侵入し、自衛隊員や警備員に催眠術を掛けてお昼寝させたり。
子供たちを見付けるも、またしても翻弄される。まるで緊迫感ナシのキャッキャッキャッキャッの鬼ごっこ。その“鬼ごっこ”の最中、とある事がきっかけでお姉さんは本来の記憶を取り戻す。
その頃ガメラは海中でジグラ星人の宇宙船を破壊。その中から現れた深海怪獣ジグラ!
海の怪獣なので陸に上げて有利な立場になったかと思いきや、怪光線を浴びて仮死状態に。いつも通りのパターン化、必ずガメラはピンチにならないといけない。
ガメラを復活させようとする。
子供たちは潜水艇に乗って海中へ。
迫るジグラ! 危うし!
またまた地球人類の命運を懸けて鴨川シーワールドの一室で迫られる決断。
ジグラに打つ手ナシ。降伏か否か、とんでもねー事しか考えない。
そんな時、ガメラ復活!
さあ、ジグラと再戦だ。
今度こそ負けないぞ、僕らのガメラ!
サメをベースにした新怪獣ジグラ。
これまたレギオン似のビジュアルは悪くない。って言うか、レギオンってギロンとジグラのハーフ…?
基本海の怪獣だが、何と陸でも二本足で立つという離れ業!
背中のヒレで何でも切り裂くって、子供の頃よく想像したなぁ…。
そんなジグラのビジュアルと、ガメラとの海中戦が見もの。
当時の日本は公害問題真っ只中。
ライバルの怪獣王も公害怪獣と戦い、奇しくも同年夏公開。
ある意味、『ゴジラ対ガメラ』!
結果は…、
圧倒的にゴジラの勝利。
あちらはヘドラを通して公害の恐ろしさを描き、ゴジラを通して公害問題を訴えていた。なのにこちらは…。
最後にお決まりのようなメッセージ台詞だけを言い、おバカな子供たち(本作での子役の演技は想像を絶する…!)、おバカな大人たち、おバカな侵略宇宙人による、ガメラが何だか可哀想なくらいのおバカ映画だった。
本作のみ大映と日活共同配給による“ダイニチ”作品。
この後大映の倒産により、本作で昭和ガメラシリーズは事実上の終了。
これまで敵怪獣や低予算と戦って勝ってきたガメラだが、倒産には勝てなかった。