「ガメラ対低予算」ガメラ対宇宙怪獣バイラス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ガメラ対低予算
シリーズ4作目。1968年の作品。
本作から昭和ガメラは本編も特撮も見てはっきり分かるほど質落ちに。
まず、本編。
前作までは地球を舞台に一応それなりに大人も見れる話だったが、突然の路線変更、異星人による地球侵略モノに。
…いや、ゴジラだって『三大怪獣 地球最大の決戦』『怪獣大戦争』で宇宙色になったが、それでもまだまだ特撮SFの面白味があった。
またTVでは『ウルトラセブン』が放映され、大人も見れるSFであった。
しかし、こちらは完全に子供漫画SF…。
主演は本郷功次郎とクレジットされているが、実質主役は正夫とジムの二人の少年。
潜水艇でガメラと遊泳したり、ピンチに立ち向かったり、少年二人が大活躍!
その一方、異星人に囚われ、ガメラもコントロールされてしまう。
世界人類は絶体絶命の危機! 正夫とジムを犠牲に異星人の宇宙船を攻撃するか、子供二人の命は犠牲に出来ず降伏するか、二者択一!
国連が選んだのは、何と後者!
“人間一個の命は地球より重い”を地でいった!
子供向けSF漫画としてはハラハラドキドキ理想ストーリーかもしれないけど…、ねぇ…。
科学考証もリアリティーもナシ&無視! 有るのは荒唐無稽とツッコミで、沢山有り過ぎるのでいちいち挙げられません!
でもどうしても言いたいのは、バイラス星人の宇宙科学を一瞬で分かる宇宙的超天才の正夫&ジム!!
トカゲ、コウモリときて、今回の敵は“宇宙イカ”。その名は…
バイラス!
確かにその造形はユニークで印象的。闘い方も。
“ガメラ対バイラス”で特に記憶に残っているのが、バイラスが鋭利なナイフのような頭でガメラの土手っ腹を何度もグサッ、グサッ、グサッ!
それにしても、完全子供向けの作品でよく見せたもんだ…。
自分も昔見た時、ガメラ可哀想と思いつつ、少々残酷でもあり、ひょっとしたらそれが昭和ガメラを敬遠した理由かもしれない…。
『ガメラ対バルゴン』『ガメラ対ギャオス』はそれなりに特撮の醍醐味あり、複数の対決も繰り広げられたが、特撮は目に見えてショボくなり、対決も一回だけ。
それを補うかのように、バイラス星人の“ガメラ研究”として昭和ゴジラ後期シリーズでもやった禁じ手、過去作品の流用。これが70分の尺の内、15分~20分ほどを占めている。カラー作品なのに、突然白黒にも!
まあ、まだいい。が、この後の作品でも定番のようになり、いい加減飽きてくる。
また、音楽も似たような音楽が延々と。
でもそんな中で、遂に誕生! 昭和ガメラの名曲“ガメラマーチ”!
これも子供向けだが、改めて聴くと軽快で、嫌いじゃないんだなぁ。
これら質落ちの理由は分かり切っている。
大映の業績不振。
ガメラシリーズはヒットはしているものの、作られていく度にどんどん削減。
それが全てではないが、こういう特撮作品にはやはりどうしても欲しい。
本作でガメラはバイラスと闘っていたのではない。
ガメラが闘っていたもの。その名は…
低予算!