「低予算なりの工夫が切ない」ガメラ対宇宙怪獣バイラス しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
低予算なりの工夫が切ない
ガメラ・シリーズ第4作。
サンテレビ「アフタヌーンシアター」で鑑賞。
シリーズ初の侵略者・バイラス人の地球侵略作戦に、ガメラとふたりの子供たちが力を合わせて立ち向かう、と云う筋書きはシリーズのコンセプト―「怪獣映画は子供の目線を大切にしなければならない」を地で行く王道パターン。
一見ガメラ映画の理想形のような作品に思えますが、折からの大映の業績不信により余儀無くされた前作に比べて半分以下と云う低予算での製作体制が大いに影響しているのではないかなと、大人になった今では想像する次第です。
前作から引き続いて、大映スターの本郷功次郎が主演していますが、ギャラの面などかなりギリギリのところでの出演だったのではないかと思われます。ドラマ部分のクォリティーを保つため、本郷氏の出演は欠かせなかったのかもしれません。よって、子役中心の作劇にすることで彼の出演シーンを減らし、浮いた予算を他へ回すと云った工夫が行われていたかも。
ストーリー面でも工夫の跡が。ロケ代を節約するために、専ら海辺が舞台となりました。特撮シーンもミニチュアが少なくて済むから一石二鳥、と云う目論見があったそうです。
ガメラがバイラス人に操られて各地を破壊するシーンでは、過去作のライブフィルムが流用されていました。1作目のシーンも使用しているため、カラー作品なのに突然モノクロが交じると云う今では考えられない珍事態が勃発していました。
なんとも切ないエピソードではありませんか。
子供目線を強調したためか、雑なところがちらほらと。
冒頭からバイラス人撃退のための秘策に繋がる要素を伏線として散りばめていましたが、その方策はあまりにも子供じみていて、大人になった今では少々見るに耐えないものが。
単純明快なのは大いに結構なことではありますが、バイラス人がめちゃくちゃ間抜けな宇宙人に映ってしまい、なんとも残念なことになってしまっているなと思いました。
ただでさえ金の掛かる特撮シーン。頑張ってはいましたが、やはり過去作に比べるとめちゃくちゃ物足りない。殆どがライブフィルムのために、新撮シーンは冒頭の宇宙空間でのバイラス円盤とガメラの戦い、ガメラと潜航艇が泳ぐシーン、クライマックスのガメラとバイラスの戦闘くらい。予算を一極集中させたすごい場面があれば良かったのではないかなと思いましたが、それを求めるのは酷と云うものかもしれません。
低予算と云う過酷な状況の中で凝らされた数々の涙ぐましい工夫によって、かろうじてなりたっている本作―。昭和シリーズの中である意味とても印象に残りました。
[余談]
幼心に衝撃的だったのは、バイラスとの戦いでガメラがお腹から甲羅に掛けて串刺しにされたシーン。毎度毎度過酷な目に合わされる怪獣だなぁ、と同情の気持ちが湧いて来ました。そこからの逆転で見事に溜飲が下がったのを覚えています。
[以降の鑑賞記録]
2021/03/20:アマプラ(シネマコレクション by KADOKAWA)
※リライト(2021/03/20)