「超音波怪獣ギャオス初登場の昭和ガメラ第3作への郷愁」大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
超音波怪獣ギャオス初登場の昭和ガメラ第3作への郷愁
昭和42年公開のガメラ第三作目は、おそらく小学3年生頃に観ていて、子供ながらとても興奮した想い出があります。今回偶然にもVODの期間限定公開を見つけて57年振りに観ることができました。手足の4か所から火を噴き空を飛ぶガメラと、今回初めて知った吸血バンパイヤーからの発想で生まれたコウモリ型怪獣ギャオスの空中戦の迫力に、固唾を呑んで観た記憶が蘇りました。その醍醐味はキングギドラやラドン、モスラの空飛ぶ怪獣相手でも、殆ど地上戦がメインのゴジラ映画には無かったものです。また格闘能力の優れたゴジラの絶対的最強怪獣の安心感に比べて、動きが鈍い特徴がある亀型怪獣ガメラは、簡単に敵を倒すことが出来ない上に、今回のギャオスの最大の武器である鋼鉄を切断してしまう超音波光線をまともに受ければ深い傷を負ってしまいます。子供目線では、ハラハラドキドキの想いで観ていました。この映画の鮮明な記憶は、そのレーザーメスと化したギャオスの攻撃によってガメラが傷つき青い血を流すところと、英一少年がガメラの甲羅に乗る二つのシーンでした。同じ年齢くらいの少年が怪獣の背に乗せてもらう親和性と非現実の空想の楽しみに、幼く無邪気な私が虜になっていたと思います。
資料によると第一作の「大怪獣ガメラ」で、灯台から落下する少年を手のひらで受け止め助けるシーンが子供たちに大反響を呼んだことに好感触を得たプロデューサー永田英雅の発案により、ガメラシリーズを子供に特化した制作コンセプトの娯楽作品に変更したとありました。この観ている子供たちを飽きさせないための工夫を施したことが、今回映画冒頭から改めて感じられます。三宅島の火山噴火から富士山が噴火、溶岩に誘き寄せられるガメラが登場、地殻調査の科学者と報道人を乗せた大型ヘリコプターが飛び立ち、それが二子山上空で謎の光線を浴びて機体が真っ二つと、間髪を入れずの展開の速さ。主役の怪獣二匹が開巻早々現れて、気を緩める暇がありません。そしてこのギャオスの形体や残忍さの悪役怪獣としての完成度の高さに好感を持った子供時代は、“お化けのQ太郎”と並び良く描いた漫画の双璧でした。しかし、今見直すと英一少年を見棄てた新聞記者を始め、新幹線の乗客を食べるなど、人間の血を好む残虐さに無関心でいられたのが不思議です。と言うのも、幼少の頃の私は、「モスラ」に出てくるインファント島の現地の人たちが実際にいて出演していると思い込み、テレビか映画の時代劇では正義の味方の主人公に斬られてしまう悪党の家来が本当に死んでしまうのかと憐みの気持ちで観ていたからです。流石に9歳になれば虚実の分別が付いて、怪獣映画のすべてがフィクションと理解するのが当然ではあるのですが。
ギャオスの超音波光線によって自衛隊の戦闘機が真っ二つになったり、名古屋城が破壊されるのは予想できても、新幹線の上部の屋根部分だけが剝がされるユニークさと新聞記者が乗っていた乗用車が分割されて走行する奇想天外のギャグには今回笑ってしまいました。しかし、この記憶がありません。鑑賞しながら、9歳の自分と今の初老の自分が同時にどう思うかを整理するのは、不思議な感覚です。小さい時トンボやカブトムシを捕まえては散々遊んだのに、大人になってからは触るのも嫌がるのに似ているかも知れません。
主演の本郷功次郎はこの時29歳で、前作の時は主演とは言え子供向け怪獣映画のオファーに詐病も使って抵抗したそうです。しかし、後年代表作の1つにガメラシリーズを公の経歴に明記した逸話を知り、映画ファンとして心が温かくなりました。確かに俳優として大人が満足する名作に出演したい気持ちは、色んな映画を観て来た私にも理解できます。それを記録に例えれば、このガメラ映画出演は記憶に残る出演だと言えます。映画は娯楽であり、芸術でもある。公開当時評価されても永遠ではないし、月日が経ってから漸く注目され評価されるものもある。題材がどうであれ、スタッフ、キャストの真摯な取り組みがある映画は命を持つという事だと思います。この作品では、国土開発の一環として奥州街道寄りに高速道路を強行する企業と、開発反対を標榜しながら実は地上げを目論む地元民の軋轢を扱っていて、今日の視点で観ても興味深いものでした。金丸村長のお金に執着する欲深さに辟易し翻弄される村民の姿も面白いし、そんな抵抗勢力に呆れながら開発に邁進する労働者の直向きさが、本郷功次郎によって表現されています。有名俳優は、他にその金丸村長を演じた上田吉二郎で適役の好演を見せます。第二作に比して制作費を制限された事情のキャスティングでもあるでしょう。
車のミニチュア撮影の稚拙な映像を観ていて、当時人気を博したおもちゃのレーシングカーを想い出します。父は、小学館の少年雑誌の月刊誌を子供たちに購読させ、トランシーバーやレーシングカーの流行りものおもちゃも買い与えてくれました。小学校に入る前には、珍しく父と二人だけで行ったデパートで、これはチャンスと思った私が、レールを走る電車模型が欲しくて駄々を捏ねたこともありました。兄姉の羨望をよそに、ひとり電車遊びに興じる私でした。この電車模型はプラレール以前の本当に簡素なものでしたが、レーシングカーは道路コースも応用が利き、車線の中央に溝があり、そこに車の中央に刺さってあるピンを刺して走らせるものです。車線には電線が通っていて、そこから電流を得た車を速度変更しながら走行させるものです。
共感ありがとうございます。
本郷功次郎さんは名作大怪獣空中決戦にもお呼びがかかったんですから、もって瞑すべきですね。
ギャオスの矢印頭のデザイン凄いですね、子どもでも描きやすいし。