「ガメラは止まらない...トシオも止まらない!!」大怪獣ガメラ 思いついたら変えますさんの映画レビュー(感想・評価)
ガメラは止まらない...トシオも止まらない!!
「大映だってゴジラに負けない特撮作れるんですけおおお!!」というパワーが先走って有り余った怪作にして快作。いやもう終盤、涙流して笑っちゃった...こんな大昔にとんでもないジェットコースタームービーがあったもんだ。さながらウルトラマンタロウの濃い部分を10話分ぐらい濃縮して見たようなエキセントリックさ、エネルギッシュさ。この振っきった勢い、嫌いになれるわけが無い。そりゃ成功に結びつきますわ。
いやまぁ、B級グルメ的な判断での大好きなんで、星は少しだけ控えめにしておきます。でもニッッコニコで見終わったのは事実です。内心は星5あげたい 。
物語は北極に端を発する。
紆余曲折があって(ほんとにいきなりややこしいいきさつがある)氷塊に堕ちた核爆弾。その熱エネルギーを(たぶん)吸収し、アトランティスの言い伝えにある伝説の巨大ガメが姿を現す...!
文字通り原子爆弾をも含めた地上のあらゆる熱エネルギーはガメラの餌に過ぎず、おまけに空飛ぶ円盤さながらに高速飛行能力まで備えた完全無欠の大怪獣。その上空腹になれば無差別破壊を辞さない60m級の暴れん坊に、世界中の頭脳集団が頭を抱えるハメに。
実際、中盤までのガメラの被害は洒落にならないえげつなさが前面に出ており、現実での災害を捉えたであろう資料映像のインサートが安上がりながらも笑えない生々しさを出している。逃げ遅れた人々に直に火を噴く容赦ないカットまである。確かにここだけならゴジラにも増して怖いかも...って思ってしまう。
しかし決着が近づくにつれどんどんギャグ漫画じみた大味さを大特撮でもってお送りされるんだから色んな意味で堪らない。
視聴する子供たちの目線として、亀をこよなく愛するも周りの不理解に苦悩するトシオ少年というキャラが出てくるのだが(実際当時から亀は子供に人気の動物という認識があったっぽい)、ガメラに一度命を救われたことで自然とガメラにも情がわく。その後殆どのシリーズで踏襲されることになる「ガメラと子供たちの強い絆」の幕開けなのだが...本作に限って言えばまぁ割と一方通行な気がしないでもない。この後先述の大惨劇が挟まるわけで、これで「ガメラは本当は良い奴なんだ!」って泣きつかれても...うぅ〜ん...?
しかしガメラと同じくらいトシオ君も誰にも止められない。ガメラに会うためなら餌の列車に紛れ込むわ船に密航するわ...この手のキャラクターって上手く感情移入できる見せ方なら同情を誘うか、失敗例ならイラつかせるかどちらかだと思うのだが、この子はこう、突き抜けすぎてて...もうここまで来たらどうなっても本望だろうから好きにするがええ!という気持ちになってしまう。
最終作戦、人類に残された唯一の「ゼットプラン」でもって迎え撃つべく、世界一丸となってガメラに炎の餌を巻き、プランの待つ島へおびき寄せる。嬉しそうに火柱を吸いながら海を渡る姿に、あんなに怖かったガメラがチョロ可愛く見えてくる。またガメラが島に上がるか上がらないかの駆け引きが...そんな畳み掛けるような偶然ある?!って凄すぎて笑っちゃう。そして最後は...伝聞で知っていたとしても、是非あなたの目で見てくれ。投げっぷりがサイコーだから。ドラえもんの栗まんじゅう回かよ。
初代ゴジラが常に重々しいメッセージと切り離せない記念碑作であるのに対し、こちらは良くも悪くも、悪くも良くも、99パーセント娯楽に振り切ったことが分かるパニックモンスターものだが...これが昭和期では一躍大映を代表するスーパーヒーローになったり、平成初期を代表する名作特撮映画に繋がったりするんだから世の中何でも作ってみるもんである。って書くと何だか見下したふうに取られそうだが、メチャメチャクライマックスまでの瞬間最大風速がすごかったのも事実だし、ネタ的な評価抜きにしても映像の迫力はモノクロ映画であることすら忘れさせるほどに派手だったんで、...あまり頭を使って観るものでもないのでレビュアー様方の全体的な温度が低いのもわかるが...これもまた正しくエンタメだと僕は断じる。いやもう本っ当、こういうの大好き。
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私事ですが、一個前に見たディズニーの「ウィッシュ」云々が色んな意味で尾を引いてて...怒りに満ち満ちた文なのに過去一で伸びちゃったもんだから「次、何見ても感想言いづらいな...」とか、「大して嫌いでもない映画を、承認欲求のために大袈裟に悪く言うようなひねくれ者になっちゃったらどうしよう...」などという気持ちでいたのだが、この吹っ切れた痛快作がYouTubeでの無料公開という形で目に飛び込んできてくれたおかげで、全てがちっぽけに思えてきた。ガメラは子供の味方だが、今日に限っては僕の味方だった。