「火を吹き、空を飛ぶ! ゴジラと対するニュー怪獣スター、ここに誕生!」大怪獣ガメラ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
火を吹き、空を飛ぶ! ゴジラと対するニュー怪獣スター、ここに誕生!
本作のレビューはガメラ生誕50年の2015年に一度書いているが、その時はシリーズ纏めてと今後の怪獣映画への明るい期待について…というちょっと変わった切り口でのレビューだったので、改めて。
同時に、正直ガメラシリーズはゴジラシリーズほど詳しくなく愛着薄いが、何とか頑張って、これから追い追いシリーズレビューを。
という事で、1965年公開の記念すべき第1作目。
時は怪獣映画ブーム真っ只中。
東宝の怪獣王に対抗すべく、各映画会社こぞって挑むも、ことごとく不発。
そんな中で唯一、シリーズ化と人気を築き上げ、対する事に成功。
その魅力を、内容と共に。
北極のエスキモー集落を訪れた日本の動物学者・日高博士ら調査団。目的は、彼らの伝説でアトランティスに居たという巨大なカメの話を聞く為だった。
その時、国籍不明機が米軍機に撃墜される場を目撃。その機は原爆を搭載しており、大爆発を起こす。
氷の大地が大きく割ける。原爆の影響によって、氷の下から、エスキモーが恐れる“アトランティスの悪魔の使者”が目覚めた。その名は…、
ガメラ!
今となっちゃあ“正義のヒーロー怪獣”や“守護神”のイメージあるガメラだが、初出現時はゴジラと同じく恐怖の怪獣。何だかちょっと新鮮。
しかし、北海道で灯台から落ちそうになった子供を助けるシーンがあり、早くも後の片鱗が垣間見える。
北海道から日本に上陸。地熱発電所を襲う。
火を好み、火をたっぷり食らう。
平成ガメラはプラズマ火球だが、昭和ガメラと言えば、火焔放射。
よって、自衛隊の火器攻撃はかえって仇になる。
原爆で目覚めたので、原爆も通用しない。
硬い甲羅はミサイルをも跳ね返し、撃つ手ナシの無敵の大怪獣!
が! 火に強いという事は、寒さに弱い。
冷凍爆弾でガメラの動きを封じ、その間に通常爆破でひっくり返す事に成功。
カメはひっくり返れば動く事が出来ない…のは、普通のカメのみ。
頭手足を引っ込め、回転して空を飛んだ…!
大映にだって優れた特撮技術があり、『釈迦』などそれを駆使した特撮大作も作られている。
「ならば、何故怪獣映画が作れない…?」
「ゴジラのような怪獣映画を!」
当初はネズミの怪獣の予定だったが(特撮ファンなら知っている幻の企画『大群獣ネズラ』!)、色々トラブル続きで制作中止に。
そこで、当時の大映社長・永田雅一の鶴の一声。
「カメの怪獣を飛ばせ!」
そして誕生したのが…、
火を吹き、空を飛ぶ。
陸海空全て活動範囲。
それでいてヒロイックな面も。
松竹ギララや日活ガッパとは一味違う、この魅力!
ゴジラと人気を二分する怪獣スターになったのも頷ける。
昭和シリーズの中心的存在となった本編監督の湯浅憲明は、特撮映画をちょっと冷めて見ていたとか。ピアノ線が見える、火や煙が出ていない。…
でも実際にやってみて、その難しさを痛感したという。
そんな苦労や試行錯誤、元々の高い特撮技術もあって、特撮シーンはなかなか。クライマックスの東京襲撃シーンなど、白黒の映像も相まって、堂々たる見せ場になっている。(ちゃっかりゴジラより先に東京タワーを破壊している)
火焔放射は実際の火を使用、回転ジェットはアニメーションなど、スタッフのアイデア駆使した特撮表現もユニーク。
怪獣映画としては王道だが、人間ドラマ部分ははっきり言って、1954年『ゴジラ』に遠く及ばず。
チープでツッコミ所多々。
その最たるは、ガメラに助けられたカメ好きの少年。
「ガメラは本当は悪い奴じゃないよ!」と一見大人たちに訴え続ける純真な子供のようだが、攻撃や危険な場に忍び込んだり、邪魔ッ!!
挙げ句の果てに、あんなにガメラを助けようとしてたのに、ラストはあっさりと「ガメラ、さよなら~!」って、何なんでしょう、この子…。
さて、撃つ手ナシの人類は、日本・アメリカ・(当時の)ソビエトなど国境を越えて立ち向かう。
人類の叡知を集結させた“Zプラン”。
火でガメラを誘導し、あっという間に伊豆大島に作られた巨大カプセルの中にガメラを閉じ込め、宇宙へ飛ばす事に成功。
人類の勝利!
しかし、ガメラは再び帰って来る。
恐怖の怪獣としてではなく、我々がよく知る魅力を伴って。
本作のガメラもいいが、でもやっぱりガメラは、ヒーローで守護神の方がしっくり来る。