「ゴジラより先に東京タワーをぶっ壊した!」大怪獣ガメラ しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
ゴジラより先に東京タワーをぶっ壊した!
ガメラ・シリーズ第1作。
サンテレビ「アフタヌーンシアター」で鑑賞。
ゴジラと人気を二分する、ガメラの記念すべきデビュー作です。当時は特撮怪獣映画の黄金記で、各映画会社がこぞってブームに便乗しており、多くの作品が生み出されていました。
大映も参戦し、口から火を吐く、両手両足を収めて回転しながらジェット噴射で空を飛ぶ、動物性を強調して四足歩行であるなど、ゴジラには無い特徴を持つ怪獣が誕生しました。
ガメラを語る上で外せない要素として、いちばんに子供が挙げられるでしょう。ガメラは常に子供の味方。本作は人類とガメラの戦いが描かれるので悪役扱いですが、灯台から落ちた少年を救う場面もあり、その片鱗が垣間見えました。
昭和シリーズでは作品を経るごとに子供目線を重視した作風が顕著となりました。後の平成三部作などでもそれは踏襲されていました。「怪獣映画を観るのは主に子供」と云う信念を徹底したからこそ人気を獲得し続けているのかも。
そのためかシリーズを通して、他の怪獣映画でよくあるような、科学者が怪獣を倒す決定打を発見すると云うような、大人が活躍する場面が殆どありませんでした。子供が着想したアイデアを大人が実行する、と云うスタンスでした。
本作ではまだ大人の活躍が目立ちましたが、Z計画のとんでもなさは子供が思いつきそうなユニークさがありました。科学考証を度外視し子供に夢と希望を与えるようなファンタジーに徹した作風は昭和シリーズ全てに通底しています。
本作の白眉は、なんと言ってもガメラの東京上陸シーン。その迫力はゴジラ・シリーズに負けていないと思いました。猛烈な火炎放射によって街は火の海に。本家のゴジラより先に東京タワーをぶっ壊すと云う偉業を達成しました。身長差273メートルを腕力のみで倒壊させるなんてすごい馬鹿力です。
ゴジラ・シリーズと比較されるのは宿命かもしれませんが、「二番煎じではないか?」と云う前評判を跳ね除けるかのように、本作は大ヒットを記録しました。以後、大映が倒産するまで毎年1本のペースで続編が製作されることになりました。
[余談]
それにしても俊夫くん、えげつない子供です。自分が捨てた亀のチビがガメラになったのかもしれないぞ、と時系列を完全に無視した思い込みをするし、ガメラの家をつくるんだと言って石ころをいっぱいリュックに詰めて来るし(足りるわけないだろ)、ガメラに突入する石油タンクに掴まってニコニコするのはいいけれど、助けに来たおじさんを手こずらせて爆発に巻き込まれそうになるし。頭を叩きたくなりました(笑)。
「ガメラは友達なんだ!」ととんでもない行動力で大島まで密航する気合いには危うく敬服しそうになりましたが、その後の行動にめちゃくちゃ腹が立ちました。大島に誘き出されたガメラに「来ちゃだめだ!」と一喜一憂していたにも関わらず、翌日には大好きなガメラを宇宙に追放するためのZ計画の施設を「すごいだろぉ!」とさも自分がつくったかのように姉に自慢しているんですもの。お前は二重人格なのか!
と、なんだかんだ書いて来ましたが、このような部分がやけに気になってしまうのは、童心を忘れてしまったと云うことの証明みたいに感じて、切ない気持ちになったことも事実。私も大人になったと云うことなのかしら。そう云うことであるならば、俊夫くんの方がまだマシなのかもしれません。
[以降の鑑賞記録]
2019/06/27:アマプラ(シネマコレクション by KADOKAWA)
※修正(2023/12/04)