「溶けて混じって踊り狂え」蒲田行進曲 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
溶けて混じって踊り狂え
人を食ったような露悪的な脚本は良くも悪くもいつも通りのつかこうへいといった感じで好きでも嫌いでもないが、階段落ちと主人公が自宅で暴れ散らすシーンに関してはすごいなと思った。
階段落ちをしたら死ぬかもしれないという物語内のアクチュアリティが「マジでこの階段から落ちるの??」という我々受け手(=物語外)の緊張感とリンクし、その結果作品に現物以上の求心力が生まれていたと思う。
主人公が自宅で暴れ散らすシーンもかなりよかった。まずは常識の範囲内でモノに八つ当たりする。しかし次第に主人公の口ぶりが乱暴になっていき、それにつれて八つ当たりの度合いも過激さを増していく。気づいた頃には部屋中が嵐に見舞われたようにメチャクチャになっている。それはまるで主人公の内的な葛藤と衝動が外的世界との境界線を喪失し、徐々に溢れ出していったかのようだ。
作品と受け手、精神世界と物理世界といった区分が容赦なくブチ壊され、何もかもが『蒲田行進曲』という映画の俎上に引き摺り出され、そして踊り狂う。そういう暴力的な祝祭性こそがこの映画の妙味なんじゃないかと感じた。
ただまあ、最期の楽屋オチはやりすぎというか、露悪性を突き詰めるあまりオーバーラン的な空転をかましてしまっていたように思う。園子温『地獄でなぜ悪い』ほどではないにせよ、あのメタフィクション的な話の締め方の向こう側に作家の下卑た笑顔が思い浮かんでしまってうんざりさせられた。同様の手法でもホドロフスキーの『ホーリー・マウンテン』とかは好きなんだけどな。この差はなんなんだろうか。
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