「生者と死者が交わる境界にある迷宮劇場」陽炎座 シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)
生者と死者が交わる境界にある迷宮劇場
『ツィゴイネルワイゼン』よりも分かりやすく、より死者との関わりが深くなった内容です。劇作家の男が三度偶然に逢った女性との現実とも幻想ともつかない迷宮のような恋愛に取り込まれていくお話しです。主人公のファム・ファタルが彼のパトロンの妻なのか、彼が出会った別の女性はパトロンの前妻の亡霊なのか、ミステリアスでいて怪奇的な展開が妙に心惹かれます。一方、途中から登場する原田芳雄のキャラの必然性がイマイチ理解できず、彼が関わる人形のエピソードと本筋のつながりが分かりにくいです。その分、田舎芝居の舞台を借りた、あの世劇場・陽炎座のシーンは生前の罪を裁かれているようでインパクトあります。ここでも鈴木清順の好みなのか、ケレン味たっぷりの劇中劇がでてきます。役者では、松田優作がこの異常とも言えるキャラに人間味を与えています。大楠道代のファム・ファタルも魅力的でした。
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