戒厳令(1973・日本)のレビュー・感想・評価
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これは鏡に映った左右が逆転した世界 1973年と1937年 そして2022年の熱い夏
正にATG の映画そのもの
1973年7月公開
あさま山荘事件は1972年2月末
そして連合赤軍事件の全容が明らかになった
翌1973年の元旦、首謀者の一人森恒夫は拘置所内で首吊り自殺をする
裁判がいよいよ始まろうという矢先のことだった
そんな時代背景の中で本作は製作され、公開されたのだ
北一輝を主人公に二二六事件を描いている
外形はだ
果たしてそうなのか?
彼等は昭和維新を呼号している
内容的には国家社会主義への革命を目指していた
しかし劇中にあるようにその中身は軍部単独による階級闘争・暴力革命・非合法手段・強権行使に頼った日本式の社会民主主義に近い
連合赤軍が目指した武装革命とどこが違うのか?
北一輝の屋敷には明治天皇の写真が恭しく飾られてある
スターリンの肖像画と何がちがうのか?
左右が異なるだけだ
鏡のように同じだ
「革命家とは、革命を行うもののことではなく
むしろ革命に耐えられる人間のことだ」
その台詞がもっとも心に残った
つまり革命思想の為には、平然と人を殺せるかどうかだというのだ
そしてこう続くのだ
「その時、人々は全てを許すことができるだろう」と
ラストシーンは北一輝の銃殺だ
1937年8月19日
85年後の8月19日はもうすぐくる
本作の冒頭は北一輝の思想に感化された
若者が銀行王、安田善次郎を暗殺するシーンだ
1921年9月28日に実際に起こった事件だ
史実は身元を偽り、大磯の別荘の応接間に上がりこんでの凶行だった
本作では別荘の塀に寄りかかって、散歩にでてきたところを刺殺する
十数を数えて落ち着いて犯行を行う
致命傷は咽頭部の傷という
既視感はないだろうか
2022年7月8日、遊説中の元総理を手製の散弾銃で銃撃した事件が間もなく1ヵ月が来ようとしている
奇しくもこの暗殺された元総理の咽頭部に銃弾は命中していたという
動機には思想性はないという
しかし何かにつきうごかされて、人を殺して世の中を変えようというのだ
戒厳令とは、暴動などの非常事態において、立法・司法・行政に関する事務処理を軍隊の統制下に移す処置を下す命令のこと
暗殺された元総理は、憲法改正を目指している中心的政治家でした
自衛隊を憲法に明記し、非常事態条項も盛り込むと主張されていました
結果として、この暗殺によって憲法改正は遠のいたように思えます
そして現代版の戒厳令というべき、非常事態条項もまた然りです
また思想の夏が来たのでしょうか?
今年の灼熱の猛暑のように
熱中症にかかったかのように物事を冷静に深く考えずに、人々がそれぞれが勝手に思い込んだ思想、決意、恨みに突き動かされ、その思想に邪魔ならば簡単に人の命でも排除しようとする
そんな世の中に突入したよう思えます
「いま、陛下がひどく危険なのだ
大変お苦しみになっておられる」
これは劇中のセリフだが、1973年の夏、そして2022年の現在も、これが鏡に映して左右が入れ替わりったかのように思えてならないのです
陛下を憲法に読み替えればどうだろうか?
そんな2022年の夏です
舞台劇風
「やる前に十数えるんだ」。一面識もない朝日から遺品を受け取った北は、自分の書いた「日本改造論」に感銘を受けて届けたものと考えた。
かなり妄想に取りつかれている。世の中を変えようとする男はこういうものなのか。白黒映像のうえに、舞台風の台詞まわしのおかげで、さっぱり面白くない。もっと時代のバックグラウンドを描かないと、何が起ころうとしていたのかもわからない。この手は苦手だ。
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