劇場公開日 1966年1月25日

「タイトルなし」女の中にいる他人 抹茶さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0タイトルなし

2023年10月19日
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成瀬作品の中では異色の作と思うが、成瀬作品らしい演出も所々にあった。
殺人事件から一夜明けて朝を迎えると雨は上がり、テラスから聞こえるピアノの音。
既視感が…と思ったら「稲妻」だった。
葬儀のシーンで同じ空間でバトンタッチするように代わる代わる、お互いを人伝に尋ねる演出はため息が漏れた。

成瀬作品の音楽と言えば斉藤一郎だが、たまにおっと思う人が音楽を担当している。
「女が階段を上る時」の黛敏郎や、本作の林光など。
ピアノの不協和なメロディが映画のトーンにマッチしていた。

私的に川島雄三作品のイメージが強い三橋達也のキャスティングも見ておっと思った。
加藤大介はどの映画に現れてもなんでこんなに安定しているんだろう…。
登場時はタータンチェックのベストにドット柄の蝶ネクタイ姿で、
どこか可笑しみのある可愛らしさに「ああ、もうこの人は…」となってしまった笑
しかし、何といっても新珠三千代。
普段は控えめで品のある細君だが、川辺での若々しく無邪気な様子と心の読めない無表情の怖さの対比。

この頃の映画の登場人物の内面の葛藤の告白はストレート過ぎて、
胃もたれを起こしやすいけど、成瀬映画は何故かじっと見入ってしまう。

抹茶