劇場公開日 1991年7月20日

「99%は、正直いって面白くない。」おもひでぽろぽろ KIDOLOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 99%は、正直いって面白くない。

2025年10月29日
PCから投稿

けれど、最後まで見てほしい。
なぜなら――映画というのは、最後に感動できるなら、それは名作だからだ。
たとえ途中が退屈でも、見る者を飽きさせない何かが、この作品にはある。

本当のクライマックスは、エンディングロールが始まってからやってくる。
静かな余韻の中で、この映画が伝えたかった真実が浮かび上がる。

とくに女性にとって――
この作品は「新しい土地に嫁ぎたい」という、どこか本能的な願いを描いているように思う。
白い馬に乗った王子様が迎えに来る――それはただの夢ではない。
新しい出会い、新しい遺伝子、新しい愛によって、
街は再生し、人間もまた生まれ変わっていく。
この映画は、そんな人間の美しい力を描いている。

そしてここにこそ、高畑勲という作家の一貫したテーマがある。
『太陽の王子ホルスの大冒険』から『ハイジ』『火垂るの墓』まで――
彼は常に「人は社会の中でどう生きるか」「共同体はいかに再生するか」を描いてきた。
『火垂るの墓』はその失敗例を描いたものだ。
宮崎駿が「自由と冒険」を描く監督なら、
高畑勲は「共生と再生」を描く監督だ。

『おもひでぽろぽろ』は、一見すると静かで地味な映画かもしれない。
しかしその本質は――
新しい場所で、もう一度生き直す勇気を描いた、
人間の再生を讃える物語なのだ。
そして一人一人の再生から、地域が再生する。
・・・今や、インフラとネットワークの発達によって終わってしまいつつある・・人間が何千年も続けてきたものだっがね・・・

KIDOLOHKEN