お引越しのレビュー・感想・評価
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父との拳法、母との憲法
冒頭、お見合いした末に先に使った醤油を、元の場所に戻さず自分の手元に置く賢一。
これだけで冷え切った関係が伝わってくる。
離婚に頑ななのは母の方で、父は流れに任せている。
レンコ目線からすると、両親とも大好きだが精神年齢の近い父の方により懐いている印象。
それがなずなを静かに苦しめる。
2人ともレンコを大事には思っているが、なずなのそれには少し賢一への当てつけも混ざってるような…
解釈の分かれそうな含みの持たせ方が非常に上手い。
ユキオと和歌子のカップルや、サリーちゃんとの関わりで男女の機微を少しずつ学んでゆくレンコ。
なんとか両親を取り持とうとする中で、溜まっていたものが理科室で噴出。
それに連鎖するように、浴室籠城の場面でなずなも爆発し、皮肉にも状況は悪化の一途を辿る。
無理矢理の琵琶湖旅行でも、好転することはない。
この辺までは良かったのだが、夜の竹林を彷徨うあたりからのファンタジー展開は個人的にはマイナス。
行きと帰りの違いは分かりやすいが、なずなはレンコに対しては基本優しかったし。
賢一との家族関係がどうなるかも読み取れない。
ミノルくんやサリーちゃんがもっと見たかった。
サリーちゃんとのビンタ合戦の中で、余計な一言によって一発もらうミノルくんには爆笑です。
演技や髪型などとは違い演出に古さはなく、田畑智子の表情(特に最後)など芝居の見所も多い。
終盤に毛色が変わらなければ好みだったのだが…
その後と楽屋裏を合わせたようなエンドロールは新鮮で、とても面白かった。
期待度◎鑑賞後の満足度◎ 両親の離婚に直面した少女の魂の「お引っ越し」をこれでもかと丹念に描き倒した相米慎二の演出力。ラストまで一糸乱れずお見事。
①1本前に観たチャン・イーモウの『菊豆』が見事な“映画”である様に、相米慎二の本作も見事な“映画”である。
②初公開時に観たかったが結局観れず、30年越しでやっと観れた。
③(私は)関西人ですから最初は中井貴一と桜田淳子の関西弁にやはり違和感(桜田淳子の方がまだ上手かったかな)。
三角形の食卓も三人家族であった事を視覚的に表現していて面白いが、あの角で頭打ったら痛そう…突き刺さるかも…
④両親は仲が良いとレンコは、両親の別居⇒離婚の流れを理解できず強い拒否反応を示す。
すねたり情緒不安定になったりレンコは意識的・無意識的を問わず「離婚しないで」サインを出し続けるのだが、両親はすでに心は離れていて復縁は望むべくもなさそう。
仲の良いクラスメートの男子が考えてくれたレンコの思いを両親に知らしめる立て籠り計画もあえなく失敗し、ついにレンコはまだ両親が仲の良かった頃に家族で行った琵琶湖畔へ両親を誘い出す。
しかし、
三角テーブル
お引越しというタイトルが中盤以降に意味をなさなくなってゆく。キネマ旬報ベスト10では2位になっているらしいが、そこまでいい映画だとは思えない。むしろカメラアングル、長回しという撮影テクニックと編集のすごさが心に訴えてくる。
一番印象に残るのは漆場家の三角形のテーブル。各辺がアンバランスであるところも離婚の危機を迎えている家族を象徴した作りになっているのだろう。そして、終盤の花火、火祭りと近江の祭りのダイナミクスを臨場感たっぷりに伝えてくれた(テレビで観たときには当然ながら感じなかった)。
風呂場に立て篭もったときの桜田淳子の演技は背筋が凍るかと思うほど迫力があった。変な宗教に走らなければ大女優になったものを・・・と惜しくてしょうがない。意外な脇役鶴瓶もいい演技してました。理科室のアルコールランプのエピソードは良かったです(結果がわからなかったけど・・・)。そして子役の田畑智子!「おめでとうございます」の連呼も印象に残るが、どこかのじいチャンとの会話で「覚えていればいい記憶なんて5つくらいで十分」との言葉に「あ、足りない・・・」と言ってじいチャンを困らせてしまうところが心に残る。
自分も理不尽な大人になった
映画ファンには高評価の映画。家族のゴタゴタなので、ヒット作中心に鑑賞する人には退屈に感じると思います。
93年の様子がはっきりと映し出されていました。学校や親などとても生々しく、この時代や子供に戻った気分でした。
レンコが両親を元に戻せると奮闘する姿を見て、子供が親に対する特別な思いを思い出しました。
離婚ってよく分からないけど、絶対悪だと思っていた年齢で、親が離婚した子供はクラスメイトから偏見の目を持たれるなど、離婚によって子供に襲いかかる残酷さを感じました。
この夫婦は決定的なものがなかったので、余計レンコは理解出来なかったと思います。どうにか出来ると思うのがよく分かりました。
自分もかつてはそうだったのに、はっきりと説明出来ないけど離婚するしかないことやこの理不尽さを受け入れなさいと子供に思う気持ちの方が理解出来て、切なさを感じました。
母親のナズナの辛さが爆発するシーンは迫力がありました。既婚女性は共感出来ると思います。
琵琶湖のお祭りに行ってからのレンコの気持ちの変化が分かり難かったのと長過ぎるように感じました。
あっさり前向きになったので、少し拍子抜けしました。
離婚する親の状況なんて子供には関係ない
総合:65点
ストーリー: 70
キャスト: 70
演出: 65
ビジュアル: 75
音楽: 65
親の離婚問題で大人の事情が理解出来ず、子供の立場で問題を見つめている。親に何があろうが、子供にしてみれば自分の責任でもないのに大きなものを失い生活が変わるということには変わりない。離婚します、はいそうですかというわけにはいかないだろう。状況を受け入れる過程が彼女の視線から描かれていて、それが彼女の演技とともに魅力的だった。彼女が出会ったお爺さんの息子が天国にいることをほのめかされて、天国に向かって「いただきます」と笑顔で言うなんて良い意味で意表をつかれた。大人だったらお悔みくらいしか思いつかない。一晩中娘を探し回って、でも朝にその姿を見つけても怒ることもなく笑顔で話しかける母親は、娘の気持ちを理解しているからだろう。
だが子供の感じる寂しさややるせなさを描くのはいいのだが、琵琶湖畔の旅で母親から逃げるようにして一夜を過ごし朝を迎える場面が20分くらい続くのは、長すぎてちょっと退屈を感じた。現実の世界からいきなり幻想的な世界になっていて見ていて少し戸惑ったし、ここをうまく短くまとめてくれていたらもっと評価出来た。
田端智子はこれが初舞台らしく、こんな子供の時から女優をやっていたとは知らなかった。
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