お引越しのレビュー・感想・評価
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父との拳法、母との憲法
冒頭、お見合いした末に先に使った醤油を、元の場所に戻さず自分の手元に置く賢一。
これだけで冷え切った関係が伝わってくる。
離婚に頑ななのは母の方で、父は流れに任せている。
レンコ目線からすると、両親とも大好きだが精神年齢の近い父の方により懐いている印象。
それがなずなを静かに苦しめる。
2人ともレンコを大事には思っているが、なずなのそれには少し賢一への当てつけも混ざってるような…
解釈の分かれそうな含みの持たせ方が非常に上手い。
ユキオと和歌子のカップルや、サリーちゃんとの関わりで男女の機微を少しずつ学んでゆくレンコ。
なんとか両親を取り持とうとする中で、溜まっていたものが理科室で噴出。
それに連鎖するように、浴室籠城の場面でなずなも爆発し、皮肉にも状況は悪化の一途を辿る。
無理矢理の琵琶湖旅行でも、好転することはない。
この辺までは良かったのだが、夜の竹林を彷徨うあたりからのファンタジー展開は個人的にはマイナス。
行きと帰りの違いは分かりやすいが、なずなはレンコに対しては基本優しかったし。
賢一との家族関係がどうなるかも読み取れない。
ミノルくんやサリーちゃんがもっと見たかった。
サリーちゃんとのビンタ合戦の中で、余計な一言によって一発もらうミノルくんには爆笑です。
演技や髪型などとは違い演出に古さはなく、田畑智子の表情(特に最後)など芝居の見所も多い。
終盤に毛色が変わらなければ好みだったのだが…
その後と楽屋裏を合わせたようなエンドロールは新鮮で、とても面白かった。
田畑智子の天才子役ぶりに目を見張る
去年からたまに劇場で観ることにし始めた旧作。今回は1993年公開の相米慎二監督の「お引越し」。32年前の作品だけあって、中井貴一は若くてギラギラしているし、田畑智子に至っては子供でした。桜田淳子については懐かしいとしか。
内容にはあまり関係ないのですが、第一印象は2つありました。
一つ目は、京都を舞台にしたお話だったものの、全然京都を強調していないところが驚き。最近だと外国受けも考慮してか、京都を舞台にする場合ことさらにその美しさを強調していて、何となくそのキラキラ感が馴染めない気がしないでもないところ、本作にはそういう意識が全くなく、裏を返せばまだまだ日本に余裕があった時代だったんではないかと、変なところで感心しました。
二つ目は、田畑智子の天才子役ぶり。両親が離婚を前提に別居をはじめ、内心が揺れ動き行動も過激化していく小学生の役柄を、見事に引き受けていました。併せて、彼女が全速力で走りまくったり、険しい道なき山道を登ったりと、ガタイが良ければトム・クルーズばりの動きをしており、こちらも感心しました。
お話の内容としては、駄目な夫ケンイチと有能な妻ナズナの夫婦の別れ話と、それに翻弄される娘レンコの掛け合いが絶妙であるとともに、レンコの心情描写が画面から湧き上がってくるようで良かったです。それもこれも、この3人家族を演じた俳優の技量の高さに依るところが大きいと思われ、繰り返しになりますが田畑智子の天才ぶりは目を見張るものがありました。
また物語終盤、琵琶湖とも黄泉の国とも解釈出来る不思議な場所で、過去の自分との対面と別離を果たして成長していくレンコの姿を観て、今後の彼女のさらなる成長に思いをいたして劇場を後に出来たところも非常に映画らしい映画と感じました。
そんな訳で、本作の評価は★4.2とします。
当時、小6、12歳だった田畑智子の演技とキャラクターに惹きつけられるが、火祭り以降、ファンタジーになってしまうのが残念
桜田淳子さん目当て
相米慎二監督に西洋が追いつくべき時が来ている、
そうである。
リアルタイムで公開時殆どの作品を映画館で観ている者としては
(とは言っても評価しているのは『ラブホテル』だけであるが)
ほぇ〜?ど、どこが?体育会系の創り方??
としか思えないし、正直どうでもよくて
(ファンの皆さん、スミマセンね。相米さん、僕は昔から嫌いなんです。)
では、どうして今回観たかというと、
桜田淳子さんが観たかった、
ということです。
綺麗で可愛くて、でもメンド臭い女を演じさせたら
日本一の桜田淳子さんである。
桜田淳子さんは、こういう役はやはり巧い。
桜田さんの映画なので5回くらい観ているが、
(きっと相米さんにハラスメントレベルでこき使われた)
田畑智子さんが素晴らしく、長年彼女の映画も観ているが
本作は代表作であり彼女の最高傑作であることが今回分かった。
いいのか悪いのかは、わからないが。
4Kリマスターの割にはボヤケた感じで、相米さんの映画って、なんか微妙に(ソフトフォーカスではない)ピントが少しボケているようなルックで、そういう画面や雰囲気が相米さん欲しいんだと思っていて、
でも、リマスターしても少しボケているって、
なに?
少しまとまりが悪いかな?
京都と大津を舞台として、梅雨時期から祇園祭を超えて大文字や船幸祭のあるお盆の時期まで、数カ月間、家族の姿を追う。
前半は、別居した父と母の仲をなんとかとりもとうとするレンコの格闘を描いている。くるくる動きよくしゃべるレンコを田畑智子が好演していて楽しい。ただ、この映画の場合、別居して出ていくのは父親であって、レンコは母親と一緒に家に残っている。引っ越ししたわけではない。原作は確か、子と母のほうが引っ越ししていたかな?
だから「お引越し」というタイトルは物理的に家を代わるということではなく、前の自分を脱皮する、この場合は子どもの話なので成長するという意味が込められているようだ。
相米慎二の好きなテーマであって「セーラー服と機関銃」も「雪の断章」も結局は少女の成長譚であったのと同様である。
後半に入っての船幸祭のくだりは、まさしくレンコの身体や心の成長、変化を表現しているのだろう。炎や月は身体的成長(初潮も含まれる。ひょっとして初潮はそれ以前、風呂場に立てこもった時点で訪れたのかもしれないが)、湖で父母の神輿が沈んでいくところは精神的な自立を表している。
相米慎二という人は極めて含羞の強い人で例えば森田芳光のようなあからさまなイメージ化、シンボル化は好まない。この監督のとても良いところなのだが、いかんせんこの映画は後半部分の尺がやや長すぎて全体のバランスが悪い。そこがちょっと残念。
ぎゅっと抱きしめたくなる
途中は戸惑った
期待度◎鑑賞後の満足度◎ 両親の離婚に直面した少女の魂の「お引っ越し」をこれでもかと丹念に描き倒した相米慎二の演出力。ラストまで一糸乱れずお見事。
①1本前に観たチャン・イーモウの『菊豆』が見事な“映画”である様に、相米慎二の本作も見事な“映画”である。
②初公開時に観たかったが結局観れず、30年越しでやっと観れた。
③(私は)関西人ですから最初は中井貴一と桜田淳子の関西弁にやはり違和感(桜田淳子の方がまだ上手かったかな)。
三角形の食卓も三人家族であった事を視覚的に表現していて面白いが、あの角で頭打ったら痛そう…突き刺さるかも…
④両親は仲が良いとレンコは、両親の別居⇒離婚の流れを理解できず強い拒否反応を示す。
すねたり情緒不安定になったりレンコは意識的・無意識的を問わず「離婚しないで」サインを出し続けるのだが、両親はすでに心は離れていて復縁は望むべくもなさそう。
仲の良いクラスメートの男子が考えてくれたレンコの思いを両親に知らしめる立て籠り計画もあえなく失敗し、ついにレンコはまだ両親が仲の良かった頃に家族で行った琵琶湖畔へ両親を誘い出す。
しかし、
田畑智子力!
相米慎二作品はいつも『少年・少女時代の終わり』を描いている印象だが、本作もまさに、両親の離婚の危機から始まる『少女時代の終わり』の話。
小学校で巻き起こされるエピソードのひとつひとつが良いのだけど、理科室放火事件から籠城作戦の流れが特に最高!みのる、良い…
そして終盤の「異界としての滋賀」で繰り広げられるまるでイニシエーションのような「冥界巡り」はいったい何なんだろう?と思ってたら、けっこうはっきりとれんの少女時代を抱きしめ、「おめでとうございます」からのエンドロールでの『成長』と、描き切ってるな…
とはいえこうごちゃごちゃ書くまでもなく、本作は田畑智子!その鮮烈さ、生命力を伝えるために本作があると言っても過言ではない。その力を見出したことが相米慎二の力なのだと、言って良いのではないか。
ようやく見れた…。
傑作!痛いくらいリアル、そして幻想的!
この作品を4Kリバイバル上映されるまで見逃していた(知らなかった)ことに後悔してます!たぶん子持ちの家族の方が鑑賞されたら、私みたく身につまされ胸が辛くなる人も多いかもしれません。
関西弁(京都弁?)ですし、人物の配置からして名作「じゃりン子チエ」の実写版かと思い、ヒューマンコメディを想像して最初気楽な感じで鑑賞しはじめたんですけど、全く逆でした。
最初の三角テーブル(こんなんどこで買う?)のシーン、「関係崩壊した夫婦間の凍てつき重い空気の中で、必死に場を和ませようと要らんこと話す、レンコ(若き田畑智子さん)の姿」が印象的でした。この違和感アリアリの雰囲気を一瞬で表現しこの家族の関係性を明確に示す演技は、父役の中井貴一さんは勿論素晴らしかったですが、びっくりしたのが妻なずな役の桜田淳子さんの演技です!もう、名演って言っても良いくらいの迫真の演技じゃないでしょうか。冷徹な妻(笑)と優しい母の演じ分けがあまりに自然過ぎてちょっと恐ろしいくらいでしたよ。思えば作品公開ほぼ同時期に彼女の身辺で起こった出来事により、彼女の芸能活動が実質不可能になってしまったことが悔やまれてなりません。
シナリオも秀逸で夫婦間の関係崩壊の理由が、ステレオタイプで分かり易い「男の浮気」とミスリードさせつつ、「妻の不倫」も匂わせつつ・・・一番厄介な「感情的な嫌悪感の継続による人格否定」に落ち着いちゃうのが、リアルすぎで男性側として個人的に胸が痛いです(笑)。
各々のアイデンティティやプライドの保持の為に大人になると何だか難しい手順や駆け引きが必要なのに対し、レンコの小学校の男友達が「レンコが転校したら困るわ〜」って、なんの飾りもなくストレートに自分の言葉として伝えているのを観て、ほんま良い友達やなあ、と胸が熱くなりました。
物語終盤は、古来から続く日本の祭りをモチーフにしつつ幻想的なシーンで締め括られていて、レンコの自立が暗示されてて良かったと思います。
この機会にぜひ映画館でご鑑賞ください!
大人の都合に振り回される子供の心情と実情
冒頭、加速度に満ちた躍動感を見た時、この映画の成功を確信した
京都を舞台に、それまで家族だった3人の心が離れて、初めて過ごしたひと夏の物語。
冒頭から、11歳の主人公のレンコ(オーディションを経て選ばれた田畑智子)が躍動する。その加速度に満ちた走りを見た時、この映画の成功を確信した。この高い運動性は、無駄な悩みや不安を駆逐するから。ただし、レンコは、両親が別居することになり、父親であるケンイチ(中井貴一)が家を出て行き、母ナズナ(桜田淳子;好演)と暮らし始める。テーマは、子の旅立ちにあると思われ、その背景に家族や社会、自然、ひいては宇宙が存在しているのだと思った。一言で言えば、テーマは生きること。いつもの相米慎二の長回しだけでなく、室内の会話では、鏡を利用した展開もあり、コッポラの影響かと思った。
一番目立つのは、自然界の水と火。引越しの前夜の梅雨からはじまり、梅雨の上がる直前には豪雨(黒澤の映画を思わせる)があり、京都の夏を告げる祇園祭がはじまると、庭には水が打たれ、山向こうの琵琶湖のお祭りでは、おじいさんに水をかけられる。この船幸祭の祭礼は、湖上で行われる。一方、引越しの時のゴミ出しにくすぶる火に始まり、小学校の実験室のアルコールランプ、夏の終わりを告げる京都の大文字焼き、琵琶湖の祭りの花火、湖上で燃えさかる船。水と火が何を意味するのかは知っているから、映画の終盤はひたすら、何が起きるのかと思い怖かった。
心に残るのは音、梅雨や豪雨の雨音に始まり、夏の到来を告げる祇園祭のコンチキチンの鉦(電話の背景に聞こえ、相手とつなぐことも)、琵琶湖のほとりで坂を駆け上がる時の下駄の響き、炎がはじける音、でもそれだけじゃない。室内でも、紙を破る音、話し声の背景で、大根をおろす音が伴奏になっていた。しかも、前半には、リュート(あるいは琵琶)の響き、中盤では二胡を弾いているらしい音楽も聴こえた(これは、三枝さんの考えだろうか)。この映画がヨーロッパでいち早く再評価されたのも、音楽から連想されるシルクロードを思わせる世界観も一翼を担ったのかも。どだい祇園祭の背景には、ペルシャを含む世界がある(インバウンドの人々の圧倒的な支持を得ている理由でもある)。レンコとナズナの二重唱も、爆発的な世俗曲の歌唱もあったが。実は、これだけ、自然界の音や音楽が聞こえると、逆に静寂が極めて強い印象を与える。躍動感と静寂の強い対比。
役者さんでは、中井貴一は、いつものように飄々としていた。彼は、日本を代表する2枚目俳優であった父、佐田啓二と比較されて、どれくらい苦しかったことだろう。桜田淳子が秋田美人であることも改めて意識したが、体型の変化に触れていたことが可笑しかった。これがキャリアの最後になるなんて、あり得ないことだ。バッシングを気にする必要は全くない。信教は、個人の自由だ。田畑智子には、現在ではありえない相米の強い演技指導があったに違いない。
相米慎二が私たちに遺してくれた傑作をまた一つ知ることができたことを何よりの喜びとしたい。
田畑智子ちゃん、えらいなあ
いい映画に出させてもらって、たくさん走って、逆立ちして、ボクシングして、水ん中に入って、台詞も覚えて。ちゃあんと主役演技して立派でした!中井貴一も桜田淳子もよかった。桜田淳子はミニスカートの脚の形も美しく演技もナチュラル。もったいないなあ。同世代のアイドルにはこんな役、誰もできなかったと思う。未来の彼女の演技を見たかった。
京都の人達のコミュニケーション・スキルは小学校のあのワシャワシャ状態で鍛えられるんだなあ。「・・・じゃん!」を気持ち悪いってはっきり言うし。
今は年末です。「おめでとうございます!」の時季がもうすぐ来る。染之助染太郎、二人ともとっくに亡くなってしまった。
おまけ
レンコ(田畑智子)がトイレに閉じこもったときでしたっけ?その時、オー!とびっくりしたのは、洋風トイレの横に男性用小便器があったことです。実家にも部屋別セパラートで両方あったんですが大昔。なんか驚きました。
田畑智子氏がデビュー作とは思えない『じゃりン子チエ』竹本チエのような元気ハツラツとしたレンコを演じており白眉
Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下さんにて「第80回ベネチア国際映画祭」クラシック部門で最優秀復元映画賞受賞した相米慎二監督作品『お引越し』と『夏の庭 The Friends』の4Kリマスター版が《凱旋》公開。上映後には『セーラー服と機関銃』で助監督デビューした黒沢清監督、行定勲監督、瀬田なつき監督、森井勇佑監督、山中瑶子監督、映画ライター金原由佳氏のトークショーも開催。
『お引越し』(1993)
両親が離婚を前提とした別居生活に入り、父親(演:中井貴一氏)が家を出たため、母親(演:桜田淳子氏)とふたり暮らしになった小学6年生レンコ(演:田畑智子氏)の新生活に馴染もうとする少女の揺れる心の葛藤と成長を描いた京都を舞台にしたドラマ。
本作がデビュー作の田畑智子氏がデビュー作とは思えない『じゃりン子チエ』竹本チエのような元気ハツラツとしたレンコを演じており白眉。相米監督『ションベンライダー』『台風クラブ』同様に、ごく短い期間(夏休み)の主人公の成長を見事に体現していましたね。
桜田淳子氏も本作が現時点では最後の出演作。女優としても脂が乗ってきた時期だっただけに惜しかったですね。
本作は海外(フランス)でも人気とのことですがソフィ・マルソー『ラ・ブーム』(1980)みたいに離婚率の高いフランスのお国柄もあるのかもしれませんね。
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