「「親の都合に子供はなすすべがない」」お引越し かなさんの映画レビュー(感想・評価)
「親の都合に子供はなすすべがない」
今までの長回しを多用して若手の俳優から緊迫感を引き出し、薬師丸ひろ子、工藤夕貴、斉藤由貴ら当時のアイドルを主人公にエンターテインメントを主軸としながら、メッセージ性を彼なりに取り込んでいた作品が、相米慎二初期作品群であった。
しかしこの「お引越し」からは、相米慎二の後期作品群と呼ばれる、テーマ性を重視した映画となっている。長回しを極端に使用せず11歳の少女の両親の別居に伴い心の動揺と成長に大胆に切り込んでいる。アップシーン、画面の切り替えしの多用も今回の映画では特徴的だ。
父親(中井貴一)と母親(桜田淳子)が子供に相談なく別居や約束を勝手に決める。その理不尽に対抗するすべがない子供心が痛く心をうつ。レンコ役の田畑智子の表情と身体から発する演技が素晴らしい。
レンコが母親と旅行行き一人行動し、知らない老人と出会いによる気づきや、林の中をかきわけたり、海辺へ行ったりする冒険のシーンは、台詞がまったくなく、レンコの五感が見る者にダイレクトに突き刺さる。加えて心霊的幽玄性の描写がレンコを成長させる。レンコが母親に言う「早く大人になるかね」という台詞には、大人の都合に振り回せれたくないという感情の高ぶりと、エンドクレジットに映る自立を目指すレンコの表情の映像は素晴らしい。
相米信二のエポックメーキング的な映画である。相米ファンでなくても映画好きには必見の映画です。
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