「田畑智子の天才子役ぶりに目を見張る」お引越し 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
田畑智子の天才子役ぶりに目を見張る
去年からたまに劇場で観ることにし始めた旧作。今回は1993年公開の相米慎二監督の「お引越し」。32年前の作品だけあって、中井貴一は若くてギラギラしているし、田畑智子に至っては子供でした。桜田淳子については懐かしいとしか。
内容にはあまり関係ないのですが、第一印象は2つありました。
一つ目は、京都を舞台にしたお話だったものの、全然京都を強調していないところが驚き。最近だと外国受けも考慮してか、京都を舞台にする場合ことさらにその美しさを強調していて、何となくそのキラキラ感が馴染めない気がしないでもないところ、本作にはそういう意識が全くなく、裏を返せばまだまだ日本に余裕があった時代だったんではないかと、変なところで感心しました。
二つ目は、田畑智子の天才子役ぶり。両親が離婚を前提に別居をはじめ、内心が揺れ動き行動も過激化していく小学生の役柄を、見事に引き受けていました。併せて、彼女が全速力で走りまくったり、険しい道なき山道を登ったりと、ガタイが良ければトム・クルーズばりの動きをしており、こちらも感心しました。
お話の内容としては、駄目な夫ケンイチと有能な妻ナズナの夫婦の別れ話と、それに翻弄される娘レンコの掛け合いが絶妙であるとともに、レンコの心情描写が画面から湧き上がってくるようで良かったです。それもこれも、この3人家族を演じた俳優の技量の高さに依るところが大きいと思われ、繰り返しになりますが田畑智子の天才ぶりは目を見張るものがありました。
また物語終盤、琵琶湖とも黄泉の国とも解釈出来る不思議な場所で、過去の自分との対面と別離を果たして成長していくレンコの姿を観て、今後の彼女のさらなる成長に思いをいたして劇場を後に出来たところも非常に映画らしい映画と感じました。
そんな訳で、本作の評価は★4.2とします。