劇場公開日 2024年12月27日

「少しまとまりが悪いかな?」お引越し あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5少しまとまりが悪いかな?

2025年1月7日
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鑑賞方法:映画館

京都と大津を舞台として、梅雨時期から祇園祭を超えて大文字や船幸祭のあるお盆の時期まで、数カ月間、家族の姿を追う。
前半は、別居した父と母の仲をなんとかとりもとうとするレンコの格闘を描いている。くるくる動きよくしゃべるレンコを田畑智子が好演していて楽しい。ただ、この映画の場合、別居して出ていくのは父親であって、レンコは母親と一緒に家に残っている。引っ越ししたわけではない。原作は確か、子と母のほうが引っ越ししていたかな?
だから「お引越し」というタイトルは物理的に家を代わるということではなく、前の自分を脱皮する、この場合は子どもの話なので成長するという意味が込められているようだ。
相米慎二の好きなテーマであって「セーラー服と機関銃」も「雪の断章」も結局は少女の成長譚であったのと同様である。
後半に入っての船幸祭のくだりは、まさしくレンコの身体や心の成長、変化を表現しているのだろう。炎や月は身体的成長(初潮も含まれる。ひょっとして初潮はそれ以前、風呂場に立てこもった時点で訪れたのかもしれないが)、湖で父母の神輿が沈んでいくところは精神的な自立を表している。
相米慎二という人は極めて含羞の強い人で例えば森田芳光のようなあからさまなイメージ化、シンボル化は好まない。この監督のとても良いところなのだが、いかんせんこの映画は後半部分の尺がやや長すぎて全体のバランスが悪い。そこがちょっと残念。

あんちゃん