「子供から大人へ」お引越し もっちさんの映画レビュー(感想・評価)
子供から大人へ
『お引越し』というタイトルは、物理的なお引越しという意味ももちろん含んでいますが、精神的な、つまり子供から大人へのお引越しも含みます
この映画の主人公の年齢である12歳という年齢は、子供から大人へと移り変わるちょうどその境目となる年齢です
スタンドバイミーに登場する少年たちもちょうどこの年齢です
彼らは、それまでは大人に引っ張ってもらい人生を歩んできた訳ですが、この年頃になると少しずつ親からの自立を始めます
この映画は端的に言えば、ある少女の親からの自立物語です
最終的に彼女が自立出来たことは、最後、お母さんと2人で電車に乗って帰るシーンから感じ取ることができます
2人は電車の中で童謡『森のくまさん』を歌います
ある日(お母さん)
森の中(お母さん) 森の中(レンコ)
くまさんに(お母さん) くまさんに(レンコ)
出会った(お母さん) 出会った(レンコ)
花咲く森の道くまさんに出会った(一緒に)
くまさんの(レンコ) くまさんの(お母さん)
言うことにゃ(レンコ) 言うことにゃ(お母さん)
お嬢さん(レンコ) お嬢さん(お母さん)
お逃げなさい(レンコ) お逃げなさい(お母さん)
短いシーンですが、1番と2番でお母さんとレンコの順番が入れ替わっています
これまでお母さんに引っ張ってきてもらったレンコが、自立してお母さんを引っ張って行く側になった事をたった30秒程で表す素晴らしいシーンでした
もう1つ、印象的なシーンがあります
同じクラスの敵対している女の子と和解するシーンです
それまで、その女の子が仲のいい親を僻む様子を理解できず、いじめに近い行動を取ってしまいます
しかし、自分自身が親の離婚を経験することで、その女の子の気持ちが分かるようになります
その結果、その女の子と和解することができました
痛みを知っている人間は人の痛みが分かるようになります
人の痛みが分かる人間は人に優しい人間になれます
その事を経験した彼女はきっと誰よりも強く優しい大人になっていくことでしょう
そんな希望を感じさせる素晴らしいシーンでした